2018年09月18日に初出の投稿

Last modified: 2018-09-19

日本で年間約1万人がかかり、約2700人が死亡している子宮頸がん。その原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)への感染を防ぐ「HPVワクチン」を国が積極的に勧めるのを中止して既に5年以上の歳月が過ぎた。

このHPVワクチンについて、医療政策について調査提言する民間のシンクタンク「日本医療政策機構」が一般人1000人にアンケートしたところ、「HPVへの感染や前がん病変を予防する効果がある」という基本的なワクチンの役割を理解していない人が7割以上にのぼることがわかった。

HPVワクチンの基本的な役割を理解していない人が7割以上 日本医療政策機構アンケート

このように、自分が関心をもっていることが全ての人から注目「されねばならない筈だ」と思い込むのは、気の毒ながら典型的な認知バイアスだ。そもそもアンケートをとった「一般人」の中には少なからず男性がいる筈であって、しかも昨今ではその多くがパートナーのいない人々なのだから、男性が子宮頸がんとワクチンについて関心を持たないことを(もちろん関心を持った方がいいとはいえ)驚いたり非難しても仕方がない。そして、これは HPV ワクチンを子宮頸がんとの関係でしか取り上げていないという事実に起因している。実際には HPV ワクチンは男性の膀胱癌にも効果があるとされていて、アメリカだと 21 歳以下の全ての子供にワクチンを投与することが推奨されているのだが、日本では男性にも効果があるということを殆ど書かないので、もっぱら女性の使うワクチンだと思われている。

したがって、「7割以上」という大きな数字を作って騒ぎたくなるのも「戦術」として分からなくもないが、やはりプロパガンダの誹りはまぬかれまい。寧ろ、HIV ならともかく HPV という呼称や意味について知っている人が3割もいるということの方に着目して、実質的な理解が進んでいるかどうか、そして理解を進めるにはどうしたらよいかを検討した方がいい。このようなアンケートを扱う際に陥りがちなのは、「基本的な知識を持っている人は少なく、理解が浸透していない」という、間違った対策を促すような現状理解だ。なぜなら、多くの人は或ることについて「知る必要がある」と思っていないからこそ知らないのであって、基本的な知識を書いた本とかウェブページを増やしても全く解決にはならないからだ。とりわけ、男性にも有用であることをはっきりと書かない限り、男性の多くは既に女性の使うワクチンだと思い込んでいる人も多いと思う。

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