Scribble at 2025-02-11 07:51:05 Last modified: unmodified

添付画像

This Boker 6/8 Damascus Steel Straight Razor #151 with Genuine Ebony Handles will be a welcome addition to any serious wet shaver's collection!

Boker Damascus Steel Ebony Handle Straight Razor 6/8 Blade #151

Böker という会社もドイツのゾーリンゲンにある古い製造業者であり、剃刀の製造でも古い歴史をもっているという。それでも、「ダマスカス鋼」なんていうフレーズを使った商品をリリースしたり、あるいはそんな商品をビンテージものであるかのように販売するようになったのだから、これは僕から見れば業界の末期症状を示す兆候としか思えないわけである。

当サイトでも解説しているように、インドなどに伝わっている特殊な鋼材で作られた柱などが「ダマスカス鋼」として伝承されているが、現在では正確な素材のアンサンブルも分からないし、製法も記録が途絶えているため、どうやって製造したのか正確な情報がない。したがって、いまでは金属学や材料工学の研究者が実験して推定しているという実情である。つまり、「ダマスカス鋼」と称して販売されている剃刀やナイフは、ダマスカス鋼と呼ばれている鋼材で製造されたであろう文化財の表面に見て取れる模様を真似ただけであって、ダマスカス鋼と言える鋼材を開発した証明にはなっておらず、科学者のコミュニティからも一定の同意を得ているようなものではない。つまり、ダマスカス鋼で作られたと想定されている文化財の外見を模倣した、ただの模造品である。もちろん、Böker が製造しているのだから、剃刀としての性能は一定の信頼性が担保されているようには見えるが、正直なところそれもどうだか怪しいと言わざるをえない。

Böker のようなメーカーまでもが、はっきり言えばこういうインチキ商品をリリースせざるを得なくなってきているというのが僕の印象だ。「ダマスカス鋼」の剃刀なんてものは、Etsy や AlliExpress などでイカサマ業者や未熟なアマチュアの職人が販売している模造品というのが、traditional shaving を趣味としている人間の常識である。それは何も、1本で数万円もするような剃刀を使っている金持ちだけの話ではなく、替刃式の2,000円ほどで買える剃刀を使っているような僕でも知っているようなことであって、つまりは直刃式の剃刀について関心や興味がある人間なら、簡単に調べて心得ているような基本知識なのだ。要するに、僕らのような駆け出しの traditional shaving ユーザですら知っているようなインチキを堂々とやってのけるのであるから、これは素人にも販路を広げようとしている証拠であろう。僕らのような基本的と言ってよい心得があるユーザなら、こんなものはいくら Böker の剃刀だからといって買ったりはしないからだ。

こういうインチキ商品を老舗のメーカーが製造したり、それから Shave Nation のような YouTube のチャネルも熱心に更新している有名な小売業者が販売に手を貸したりしているのであるから、これは straight razor の業界そのものが衰退の一途を辿っていると見做さざるをえまい。そもそも、この業界は電気カミソリと安価な安全剃刀が普及してから急激に市場が縮小していて、僕の見立てではとっくの昔に(つまり、僕が生まれた頃だから半世紀以上も前には既に)嗜好品や骨董品の市場になってしまっていたと思う。現在、理容師の業界で一部の有志が日本剃刀の手入れ方法を若い世代へ伝授しようとイベントを開催しているようだが、正直なところ大半の理容師は相手にしていないであろう。そもそも理容師の専門学校・養成機関において髭剃り(シェーヴィング)の実習に使われているのが、いまでは替刃式の剃刀であり。straight razor どころか日本剃刀を手にする若い世代も、どんどん減り続けている。そもそも、『ブルーオーシャン戦略』という有名なビジネス本ですら QB House が成功事例として紹介されたように、いまや大半の成人男性は理容室で髭を剃ることなど望んでいないし、それを含めた料金を払うつもりもないであろう。デフレが続いていた2020年代までなら、カットだけで1,000円(税抜き)というのが大半のサラリーマンの利用実態であり、自宅の近所にある理容室で髭剃りや洗髪も含めて5,000円に近いコストを賄おうという人は急激に減っていたわけである。

  1. もっと新しいノート <<
  2. >> もっと古いノート

冒頭に戻る


共有ボタンは廃止しました。