Scribble at 2021-03-22 21:45:16 Last modified: 2021-03-22 21:50:11

「ある大きな組織による偵察行動がインターネット上で日夜行われている」

ネット上で偶然目にした情報セキュリティーに関するある論文にあった表現です。最初はSF映画のような話だと思いましたが、そこにあった“インターネットノイズ”という言葉が頭にひっかかり取材を始めました。(科学文化部記者・鈴木有)

“謎のメッセージ” インターネットノイズ

NHK にネット・セキュリティの話題を提供されるなんて実務家としての恥もいいところだが、確かに僕は有能であっても全能ではないので、興味深い話題があれば喜んで参考にしつつ、正当な取材活動と報道については敬意を表したい。

とりあえず最初に書いておくと、「インターネットノイズ」は和製英語である。"internet noise" で検索しても、たいていはセキュリティと関係のないテレフォニー・サービスやストリーミング音楽の話が出てくるだけだ。上記のような情報セキュリティや諜報活動(intelligence)の用語としては、"internet background noise" と呼ぶ。そして更に、そう紹介しつつも、僕はこのような表現を使うことに多少の不満がある。その理由は以下のとおりだ。

そもそも、このような表現の元になった「宇宙背景放射(cosmic microwave background)」についても同じように指摘できることなのだが、ネットワーク上で伝送されるデータに foreground も background もないのであって、たとえば Microsoft Edge という WWW ブラウザで或るウェブ・ページを閲覧するときに、「表」のリクエストやレスポンスに加えて「裏」のリクエストやレスポンスがあるわけではないのだ。通信プロトコルにおけるハンドシェイクなりリクエストとレスポンスの応答処理に何らかの表裏という特性があるというならともかく、現実には大半の「ノイズ」は我々の通信利用とは関係がない独立した事象だ。また、このような「ノイズ」を検知して、いわゆるダーク・ウェブを探そうとしたり、サーバに対する攻撃を特定する手法も考案されているわけだが、インターネット、つまりは DNS なり TCP/IP という規格を利用して通信している限りにおいて、表も裏もないというのが僕の理解だ。よって、殆ど日本では議論されていないものの、"network telescope"(ネットワークの大局的検知システム)を始めとして、解析スケールの問題として定式化する方が概念として妥当だと思う。

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