Scribble at 2024-09-16 09:47:46 Last modified: 2024-09-16 11:08:25

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How to Succeed in Mr Beast Production (Leaked PDF) (simonwillison.net)

日本では殆ど知られていないと思うが、MRBEAST というのはトップ YouTuber だ(ただし HIKAKIN らと比べて収入でどのていどの違いがあるかはわからない)。その内部資料がリークされたということだが、どういうわけかサイモン・ウィルソン(Python のフレームワークである Django の開発者)が公表しているらしい。ともあれ、YouTube で公開している動画の制作について多くの指針やヒントを掲げている文書であり、動画の質や面白さよりも YouTubeでの成功を優先し、伝統的なメディアの慣習にとらわれず、YouTubeのトレンドや視聴者の行動を深く理解することが重要だとしていて、要するにクリエーティブよりもマーケティングの観点が優先されているからか、かなりショックを受けた人もいるようだ。そういう事情を理解しているからなのか、Hacker News では冒頭に "[...] my larger meta-point is that there's a now near ubiquitous 'sour grapes' attitude that's pervaded HN that makes it an extremely unpleasant place to hold a conversation and people reading should be aware of this systematic bias when reading comments here." というコメントが掲載されている。

とは言え、僕らのように広告代理店を株主や発注元としている広告系のウェブ・コンテンツを制作しているような会社だと、動画なんてクリエーティブよりマーケティングの観点が優先するなんてのは、はっきり言って自明の話である。学生がバイト代で自主制作してる 8mm 映画とは訳が違うからだ。そして、その「訳」を的確に理解してクリエーティブとして落とし込むことは、プロの制作者としての仕事のコアであって、何も恥じることなどない。われわれ企業人としてのデザイナーは、芸術活動をやっているわけではないからだ。ただし、僕は維新の会みたいなゲス野郎どもではないから、もちろん芸術活動にもクリエイターの一人として価値を認めている。

事業として活動しているのだから、映像作品をつくる観点として財務や法務といった世の中との関わりを考慮するべき脈絡への目配せが欠かせないのは、はっきり言って社会人や大人として当然のことだ。これを軽視することが「クリエイター」であるとか、あるいはこういう観点に埋没することが「大人になること」だ、などというのは、どちらの態度であれ未熟としか言いようがない。

最後にひとつだけ。このリークされた文書をざっと読んでみて、"only problem is most people think they are better than they really are and don’t take seriously when we give them things to improve and then wonder why they never move up" という箇所には、かなり考えさせられた。なぜなら、日本、とりわけ弊社でも言えることだが、大多数の従業員は逆に自分を凡庸だと考えていて、特に何か他人よりも優れた才能があるとは思っていない。日本のサラリーマンの多くにとって、給料をこれこれの額面でもらっているのは、それは自分が給料に見合う仕事をしていると思っているからではなく、「毎日仕事をしている」とか「入社して何年も勤めている」といった、その凡庸さそのものが待遇の理由になると思っている人が日本には非常に多いからなのだ。僕が昔から書いているように、日本のサラリーマンにもともと愛社精神なんてない。会社に入れば自分の人生を会社に売り渡したも同然だと思っていて、ゲームしたり推しのコンサートへ行ったり風俗へ通ったりラーメン店めぐりする時間を削って会社へ捧げているのだから(その時間と元手を得るために働いているというのに)、それなりの待遇を得て当然だと無自覚に思っている人間が大半を占めているのだと思う。

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