Scribble at 2024-12-10 21:31:17 Last modified: 2024-12-10 21:42:24

若くして亡くなったクリステンセンの共著である『イノベーションの経済学』(ハーパーコリンズ・ジャパン、2024)を買っていたので、暇潰しに読み始めたのだが、早くも数章に目を通した時点でややウンザリしてきた。「遺著」とも言える本に対するコメントとしては辛辣に過ぎるかもしれないが、どのみち当人には決して聞こえないのだから気にしない(モルモン教の信者だったというから天国とやらで聞いているのかもしれないが、そういう気晴らしのジョークに付き合うなら、どのみち僕は天国ではなく浄土に行くと思うので、彼に反論があっても僕には届くまい)。ということで、ここをご覧の諸兄には読む価値はないと言っておく。

ひとまず概要を述べておくと、3つの種類の「イノベーション」について書かれているのだが、一つめは「持続型イノベーション」とされ、これは要するにただのモデル・チェンジにすぎない。そして二つめは「効率化イノベーション」と呼ばれるが、これも要するにトヨタ式の「カイゼン」を初めとする生産性の向上というだけのことだ。そして、最後に「市場創造型イノベーション」が出てくる。ネーミングですぐに分かると思うが、事業あるいは商品の開発や展開そのものが新しい市場を作るようなプロセスを指していて、これまた昔から数多くの経営書やミクロ経済学の本がブルーオーシャンだの何のと書いてきたように、どうすればそんな手品を再演できるのかなんて学者に分かるわけがないのだ。というか、誰にもわからないからこそ、経営学者というのは実質的に後知恵でしかイノベーションを語れないのである。そして、この本もまたそうした後知恵のオンパレードであって、恐らくは二度と起きないようなチャンスや人間関係や事故などを過小評価して何か再現性があるかのように一般論を述べているだけのレポートだ。

年齢という事情もあってイノベーションに興味がないという個人的な理由もあるにはあるが、そもそもこういうものを数多く読んで考えたところで、僕は正直なところビジネスつまりは自分の仕事だろうと新しく事業を始めたりしようと、そういうやり方で社会に貢献したり、生き甲斐を満たしたり、あるいは他人を救うという意欲はない。僕ができるのは、自らの学識なり哲学的な才能なり他の色々なスキルや経験や知見を使って、たぶんコンテンツなり、教育や指導の教材なりを作ったり、こうして自分のサイトで文章を公開することくらいだろうと思う。もちろん、クリステンセンだって、こんな本を何冊と書いてはいても、社会を改善させたり向上させる手立てが経済的な繁栄だとか会社を上場させることだとか、あるいは何かクールな商品やシステムを開発することだけに限らないというていどの見識はもっていよう。

正直なところ、こういう起業や商品開発の経緯やエピソードを雑に並べたような本は、もうどうでもいいなと思う。悪いけど、このていどの本なら、ハーヴァードを出ておらず博士号すらもっていない俺ですら書けると思うね。

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