Scribble at 2024-04-06 18:21:55 Last modified: unmodified
景気が悪くなって生活が厳しくなったからといって、儲かってる業界や高収入の人々にヘイトを向けているだけでは、文字通り生産性がない。よって、儲かって楽しく過ごしている人々が増えたほうがいいのは確かなのだから、それはそれで構わないではないかという一般論は言える。僕は別に日産の部長が僕と同じ年収になればいいなんて思っていない。首都圏では、たぶんロクな生活ができないと思う。
でも、それは僕が「トリクルダウン経済学」のような原始人の宗教みたいなものを信仰しているからではない。学術研究についてはトリクルダウンというか権威主義やヒエラルキーを支持しているが、それ以外については支持していない。経済はもとより、たとえば技術についてもだ。Google や NVIDIA や Intel が何をリリースしようと、彼らの為すがままに任せておけばハッピーだなんてのは、政治的・経済的な未熟どころか、情報科学として言ってもありえない無知無教養というものだ。金がある連中は、過剰な宣伝を展開したり業界団体や規格審議の場を牛耳って、自らデファクト・スタンダードをでっち上げられるにすぎず、それは技術として最も優れていることを保証しないばかりか、最も適切・適正である保証など全く無いのである。(あれほど differential privacy を大宣伝していたアップルが、結局はいまだに個人情報の杜撰な取り扱いをしていることでも明白だ。iPhone を購入すると、いまだにディフォールトの端末名として持ち主の Apple ID に登録した氏名が勝手に使われて周囲に通知される。どうしてこれをアメリカ FTC が疑問視しないのか、いまだに分からない。)
ともあれ、そういうことなので、日産社員の給料が上がることは別にどうでもいい。というか、上がるほうがいいのだろう。でも、そのために下請けいじめをやって(というか、昔からだろうから「続けて」と言った方がよかろう)原資を確保しているかのような体裁になっているというのでは、それが本当でないとしても、やはりステークホルダからの印象が悪くなるのは当然だし、今回は優遇資格の条件を満たしていないまま資格があるとしていたのだから、賃上げ促進税制を主管する経済産業省に対する詐欺罪なり公文書偽造罪を問われかねない事案だったとすら言える。