Scribble at 2023-04-18 15:11:22 Last modified: 2023-04-18 15:14:11

安全剃刀の替刃が工業製品として製造されている工程にあって、bevel なり切れ刃は20°以上で作られている。貝印の山田克明氏と宮崎宏明氏による「カミソリの刃先と切れ味」(『精密工学会誌』, Vol.54, Nol.11, 1988, pp.2048-2051)によると、刃先は3回の工程で研がれており、角度としては 11°-14°, 15°-20°, そして最後に先端部が 20°-25° となっていて、先端部が最も大きな角度になるよう仕上げられる。ここから更に研磨剤を塗布した革砥でバリなどを取り除く作業を経て、ようやく完成するという。

以上、剃刀の刃を製造している事業者の技術者が明解に述べているように、剃刀は先端が最も角度の大きな部分となっていて、切れ刃となる先端部を刀背と刃先の密着した状態で作ったり研ぐことは物理的に不可能である。よって、そういう研ぎ方で「切れ刃を作る」などと紹介しているブログ記事や動画は全てデタラメであって、たまたま何分も研いでいるうちに刃が削れたり砥石が削れて生まれた「砥くそ」と呼ばれる細かいペースト状の液体が刃先に当たって何らかの効果が生まれているというだけの幸運を正確に理解せず、それが研ぐという行為なのだと語っているだけであろう。

僕が研ぎ直した Gold Dollar 100 にしても、まず基本的な話として言えば、厚みが 6mm で刀背に近い箇所から刃先までの長さ(刃の幅を測るのは長すぎる)が 18.9mm となっているため、2 * arctan( 0.5 * 6 / 18.9 ) として計算すると、0.3148337 rad = 18.03864° という角度が出る。つまり、刃背と刃先を当てて十分に研げば 20° 以下の角度で刃ができるのだ。でも、そういうことだけで剃刀が適正に「剃れるようになる」とか、メンテナンスの点で適正な刃になるとは限らないのである。よって、実際に髭を剃れるようになったのは、最後に刃先を更に角度を付けて研いだり革砥で丁寧に strop することも含まれる。

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