Scribble at 2023-11-10 08:05:46 Last modified: 2023-11-10 10:49:38
この話題は Facebook でも取り上げたのだけど、Facebook ではパレードをやるということだけを話題にして、タイガースもバファローズも大阪のチームじゃないんじゃないか、なんで大阪でパレードするのという疑問を書いた。確かにバファローズは、あの西九条あたりの辺鄙なところに球場があるから、大阪の球団なのかもしれないけど、阪神は本社が大阪だろうと本拠地は甲子園なわけで、明らかに兵庫の球団だ。あと、何度も書いて恐縮だが、実は大阪には巨人ファンの方が多いと言われていて、大阪出身のプロ野球選手の多くは巨人にいたりするんだよ。阪神ファンの方が熱狂的というか、或る種の獰猛さがあるせいで、「大阪の人間やったら阪神やろ」という同調圧力が商売でも影響するために、表面的には野球なんて関心がなくても阪神の話をしてる人がたくさんいるってだけのことでしかない。大阪でも東京と同じく地方出身者が多くいて、とりわけ臨海地域に沖縄や四国の出身者が多いのは昔から有名だ。それに、是非や経緯の話はともかく外国籍の人も多い。彼らがなんで阪神を応援するんだよって話だ。
さて、上記の記事はパレードの資金がクラウド・ファンディングで集まっていないという話題なのだが、これは当たり前だろうと思うね。そもそも、NHK で毎日のように大阪放送局からの話題を眺めていても、こんなこと一度も報じられなかったからだ。つまり、資金を募っているどころか、パレードがあることじたい、殆ど知られていなかっただろう。よって、クラウド・ファンディングで資金を募っていること自体も知らないし、たくさんあるクラウド・ファンディングのサイトでどこを使っているのかも、誰も知らない。それでは資金なんて集まるわけがないのだ。
クラウド・ファンディングを成功させるためには幾つかのポイントがあって、はっきり言えば鳥の雛みたいに大口を開けているだけで餌が口に入るなんていう妄想では絶対に成功しないし、自分たちは「善いこと」をしてるから集まる筈だという思い上がりや、難病の私の子供の命は大切だから集まる筈だという思い込みも慎むべきである。野球ごとき興業のパレードなんてオリンピックですら文化的には些事だし、難病の子供は、あなたの子供だけではないからだ。要は、少ない資金と労力で効果的に説得力をもって広く周知するという、簡単に言えば多くの企業が取り組むような広報活動をしないといけないのである。
ちなみに、こういうことを日本ではすぐに「マーケティング」と言うのだが、そろそろ広告・宣伝だけをマーケティングと呼ぶのはやめてもらいたい。マーケティングは商品開発や市場調査や物流や店内の陳列あるいは在庫の処分に至る、プロダクトのライフサイクル全体を統括する概念であって、たとえば電通や博報堂がやってることはマーケティングの僅かな一部でしかない。これはアメリカでも同様の傾向があるから仕方ないとは言え、明らかに僕らのようにコトラーのような古典的で体系的な知識や経験をもつ実務家(企業のキャンペーン・サイトを制作したり運営するのも、マーケティングの一部である)から見れば、日本で広く口にされている「マーケティング」という言葉の意味合いは明らかに矮小化というものであろう。
この事例と比較できるのが、つい先日の話題となっていた国立科学博物館のクラウド・ファンディングだろう。あちらは NHKでも何度か報道されていたし、当初の予定額である1億円を超える寄付が集まっているという事実も話題となって増幅されていき、募集が終わってみると9億円近い資金が集まったという。これは SNS でも話題となって、広く知られたという理由も大きい。(もちろん、野球の優勝パレードなんかに比べて公益性が遥かに高いし、なんと言っても国立の博物館がジリ貧なんて国の恥だという別の正当な理由もあろう。)