Scribble at 2026-05-24 16:26:42 Last modified: unmodified
時間管理と大学生の成績の間には、はっきりと目に見えるプラスのつながりがあることが示されました。この影響の強さを表す数値に基づくと、成績を決めるさまざまな原因のうち、およそ6.25%分が時間管理というたった一つのスキルだけで説明できることになり、これは教育の現場で生徒のサポートや対策を行う上で十分に価値のある大きな効果であると評価されています。
上の記事で参照されている論文については、はっきり言って荒唐無稽であるか、せいぜい針小棒大という感想しか言いようがないというのが僕の意見だ。
まず Frontiers のオンライン・ジャーナルが昔から predatory journals の出版社ではないかという疑念にさらされているという事実を(偏見というよりも)指摘しておく必要がある。評価そのものを差し引いて考える必要があるかどうかは一概に言えないけれど、10年ほどのあいだに100ものオンライン・ジャーナルを(研究者コミュニティの自発的な組織からではなく)創刊しているというのは、ウェブ・アプリケーションさえあれば子供でもメディアの体裁をしたサイトを構築できるとは言っても、あまりに性急すぎる(そして、2026年現在は200以上に膨れ上がっている)。それら数多くのオンライン・ジャーナルが、従来のアカデミズムがカバーしていなかった特殊な分野をカバーしているとか、あるいは学会が存在しなかった国の研究者に成果を公表する手段を提供しているといった、それなりに納得のいく理由で創刊されているならともかく、大多数は "Frontiers in ..." というフレーズを既存の分野名やキーワードに加えただけだ。
こういう事情だけで論文を評価するべきではないが、しかしこういう事情があるからこそ、この程度の些末な成果でもアクセプトされるのだろうとは思う。冷静に読めば分かることだが、時間管理という単一の要因で学習効果への影響が説明できた結果は 6% のケースに留まる。で? だから時間の管理が大切だ・・・とは言えまい。逆に言うと、時間の管理をやっても 94% のケースでは時間の管理という一つの理由だけで成績が上がったのかどうか説明がつかなかったり、まったく影響が認められなかったのだから。こういうことは、統計学、しかも高校レベルの常識で言っても語るだけの値打ちがない相関関係というものである。僕がこのような記事を読んで即座に「針小棒大」という感想を持ったのは、修士論文で確率論を使った因果関係の定式化について議論した経験も含めて、こういう常識をわきまえているからだ。
よって、「ちゃんと時間管理をするだけで大学生の成績は向上するという研究結果」などと宇宙の真理を発見したかのような中二病としか言いようがないタイトルをつける無知無教養な GIGAZINE の編集スタッフはともかく、この論文では同時に研究結果の記録集合(プール)に関する heterogeneity も説明していて、そこではちゃんと同じ調査をやっても 98 % くらいの割合で違う結果が出る可能性があると言っているのだから、それなりに自分たちの調査や研究や成果について誠実な態度をとっていると言える。