Scribble at 2024-11-14 14:17:54 Last modified: unmodified

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「セキュリティ劇場(security theatre)」と言っても色々とあるわけだが、たとえば NDA(秘密保持契約書)などで、署名欄が必ず末尾にあるのはどうしてなのかということを考えると、ここによくある回答がセキュリティ劇場の事例となっている。

たいていの契約書では冒頭に「甲はだれだれ」「乙はだれだれ」と記入する箇所があって、書類の末尾にも甲・乙の記入欄がある。でも、最初に甲と乙について氏名や住所などを全て記載する欄があれば、冒頭に「甲はだれだれ」なんて書いて、末尾と合わせて2個所も書く必要がなくなるではないか。こう思いたくなる。でも、冒頭で「甲はだれだれ」と書く必要があるのはコンテクストを決めるためなので避けられないわけだが、住所や代表者名などの記載を末尾にしているのは、これは要するに「最後まで読んだ上で同意します」という意思表示を表すためなのだと説明される。

でも、実際には読もうと読むまいと最後の欄に記入して終わるような事例が大半を占めている。特に、業務委託契約のようにお金が絡むならともかく、NDA とか個人情報の取り扱い覚書なんていう、どちらの担当者にとっても下らない(と思っているはず)書類のために目を通す暇なんてないというのが、大多数の凡庸なサラリーマンの習性というものだ。なので、署名欄が末尾にあろうと冒頭にあろうと、必要事項についての awareness という点でなにか違いがあるわけではないのだ。

なので、習慣として後文に「本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙各自記名押印の上、各1通を保有する」などと書いてあるからといって、署名欄を末尾にしないといけないという法的な必要性はないのであって、社名を重複して記載するのが不合理だから冒頭に署名欄を置きたいというなら、この後文を合わせて修正すればいいのである。結局、凡庸なキャリア・コースを辿るサラリーマンというのは、既存の文書をコピペしてテンプレートを作ろうとするから、やるべきことを自律的に改める思考力が養われないのだ。

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