Scribble at 2025-01-29 18:11:00 Last modified: 2025-01-29 18:11:21
今日は急にパソコンが故障したというので、午前中だけ出社して代替機を用意していた。その帰りに天満橋のジュンク堂へ立ち寄って、美術の棚を眺めていたのだが、どうも違和感がある。というか、大阪本店の美術コーナーでも感じていたことなのだが、その原因がわかった。
美術、特に美術史のテキストや概説本を手に取ろうとして気付いたのだが、つまるところ西洋美術と日本美術しか選択肢がないのである。中国美術は? 朝鮮美術やインド美術やアラビア美術やアフリカ美術は? もちろん、老舗である『美術手帖』の出版元が2015年に民事再生を申請したことでも分かるように、美術の本なんて実は殆ど売れないから、そういうマイナーな分野を解説した本を出版するのは、よほど財務が潤沢で何らかの明確な方針や趣味でもないかぎり、伊達や酔狂だけでやれるものではないのだろう。でも、まったくないように見えるのは、僕に言わせれば異常だと思う。これは、もちろん哲学の棚でも大半が西欧と日本の哲学や思想書だけを並べていて、中国の思想は諸子百家という2000年以上も前の成果しかないかのように、歴史書の棚へ追いやられている。僕は、こんなのは本屋がやっているにすぎない勝手な分類であって、美術や思想に関心をもつもの、いわんや哲学者であるわれわれが唯々諾々と従っていいはずがないのである。
なので、ネットに比べれば出版物の方が「実際に販売されているものについては」信頼できるわけだが、そもそも出版されていなければネットと比べてどうのこうのなんて言う以前の問題であり、そしてネットのコンテンツにはそういうところに独自の成果を上げるチャンスがあろうと思う。実際、書店で「中国美術史」なんて本は殆ど販売されていないのだから、その点についてはウィキペディアの記事を読むほうが(内容の精度はともかく)マシというものであろう。