Scribble at 2022-08-23 16:22:33 Last modified: 2022-08-23 16:23:53

先の投稿で紹介した『50歳からの科学的「筋肉トレーニング」 若いときとは違う体をどう鍛えるか』(ジュリウス・フィンク)は、理論的な内容については類書に比べて体系的に解説されていて優れているとは書いたものの、個々の点については疑問が多いので、やはりトレーニングを説明する箇所だけでなく理屈を解説している箇所についても眉に唾をつけておいた方がいいと思う。

たとえば、具体的な内容については解説していないが、家庭で体脂肪率を推定するのに使える方法として「ジャクソン=ポロックの3ヵ所法」が紹介されている。名前だけで何もわからないので、実際に調べてみたら、すぐに出てきたのが Nevill, Metsios, Jackson, Wang, Thornton, and Gallagher, "Can we use the Jackson and Pollock equations to predict body density/fat of obese individuals in the 21st century?" International Journal of Body Composition Research, vol.6, No.3 (September 2008), pp.114-121, PMID: 20582331; PMCID: PMC2891061 だ。もともとのジャクソンとポロックの成果は1985年に発表されていて、現在は無条件に信用できる方法ではないという。

そして、これを使って体脂肪率を推定するにしても、体重計はともかく「体脂肪キャリパー」なんていう特殊な道具が必要だという。この著者は読者として筋トレマニアとか健康オタクを想定しているのだろうか。こんなものが一般の家庭にあるわけないだろう。プログラミングの初心者に UNIX をインストールしたノートパソコンを要求するようなものだ。金さえあれば幾らでも揃う道具だが、ちょっとこの著者にとっての一般人のハードルは高すぎると思う。何かといえば薬を注射しろとかジムに通えとか、この人物は日本で上場企業の事業本部長とか官僚しか交友関係がなかったのだろうか。

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