Scribble at 2025-04-23 07:51:23 Last modified: 2025-04-23 08:28:29
いまどき HTTPS の設定すらしていないとは呆れてしまう。月額で数百円のレンタル・サーバですら、SSL サーバ証明書は無料で使えるのだから、これは技術がどうこうという以前にレンタル・サーバの管理画面にアクセスする習慣や、レンタル・サーバの会社から送られてくるメールなどを読むことすらないという話である。つまりは、自分たちが公に何かを公開していて、そのために必要な管理責任というものがあるなんて自覚すらないのだろう。というか、ウェブ・コンテンツの運用とかサーバとかに興味ないんだろう。
僕が会社で「IT リテラシー」と言っているのは、量子コンピュータの原理を理解するとか、Python で問い合わせフォームをプログラミングできるとか、そういう話ではなく、本当のところはこういう基本的な目配せというか関心というか注意力あるいは、コンピュータやネットワーク通信などについての興味というものが大きな比重を占めているんだよね。つまり、世の中の大半の企業で働く人々がコンピュータなりネットワーク通信を使っていながら、それらの理解や運用がぜんぜんできないというのは、要するに興味も関心もない道具を使わざるをえないからだ。凡人なんて、本当のところ仕事の道具に興味なんてないからこそ、たとえば弥生時代からこのかた大半の人々は農作物の生態や農機具や農作業や水資源の管理や土地の改良に興味なんてなくて誰も農具や技術や水理について考えずに何百年もアリのように(いや、或る意味では産業ロボットのようにでもある)生きてきたわけで、そういう人々が仕事の道具を iPhone や MacBook に持ち替えたところでなんにもかわっちゃいない。
僕に言わせれば、リテラシーを身につけるというのは、新聞を読んだり座学で色々なことを知ったり学ぶなんていう安っぽい話ではなく、それこそ生き方を少しでも変えるということだ。いっときの大流行だった「DX」にしても、本当はオンライン・サービスを使いましょうとかコンピュータで何かやりましょうとか書類を電子化しましょうなんて話ではなく、業務や事業つまりは法人としてのなりわいを事業計画や就業規則なども含めて変えるというコンセプトなのであり、そのために IT リテラシーを身に着けないといけないわけである。企業活動や経済・金融に興味がなくて経営コンサルや中小企業診断士になる人や、あるいは車やドライブに興味がないのに自動車の整備士になる人がいないのと同じで、コンピュータやネットワーク通信あるいはコミュニケーションに関心がない人がネット・ベンチャーにたくさんいるというのは、はっきり言っておかしいと思うんだよね。それは、どう考えても採用する側に根本的な勘違いがあって、パソコンの操作ができるとかオンライン・サービスをよく利用しているとかスマホ・ゲームが好きなんていうだけで業務に従事するリテラシーを満たしているという錯覚があるからだ。僕には採用の方針とか採用基準が間違っているとしか思えない。新しく入ってくる人たちの知識や技術が乏しいのは気にしないし、あたり前のことだろう。どのみち大多数の人は僕よりも遥かにものを知らないし技術力もないなんて分かっているからだ。でもコンピュータやネットワーク通信に何の興味や関心もない人というのは、どれだけ仕事としてパソコンの操作を何十年と続けたところで、僕が言う意味での IT リテラシーは醸成されない。リテラシーを身につけることが、その人自身が生きることや生活することに結びついていないからだ。もちろん、そういう人たちにも色々な研修を実施してきたけれど、正直なところ僕のやりかたや研修内容の是非はあれ、根本的なところで何かミスマッチがあると思う。つまりコンピュータやネットワーク通信に何の興味もない人たちにメールを送受信する仕組みどころか「コントロールパネルはどうやって開くのか」なんて教えたところで、金がどれだけ儲かるのかという話はもとより、それで彼らの生き方や考え方が変わるのかというと、かなり疑わしいと思う。たぶん、最近の国家官僚やメディアの人間が、色々な機会や出版物などで広告代理店よろしく「ナッジ」に強い関心をもっているような発言をしているのは、国民に対する軽い絶望感があるのかもしれない。要するにナッジのような心理操作で国民を無意識に国家的な課題へ動員する方が、国民の自主性を醸成するなんていう無茶なタスクを掲げるよりも現実的だということだろう。もちろんだが、そういう発想こそが社会科学的にはイージーであり、戦前の(司馬史観では過大評価されがちな)アホ官僚どもが陥った全体主義や管理社会、あるいは最近の経営コンサルや宮台真司なんていうファシストの言葉を借りるなら「デザイン」という安っぽいアイデアに結びつくわけで、僕がわざわざ言わなくても危険であることは明白だ。僕は、そういう制御を社内でやろうとは思わないので、結局のところ会社ではファウンダー並の権限を与えられているという事情と、僕自身の圧倒的な知識や技術や経験をもって「権威」としてふるまい、是正したり軌道修正するくらいのことしかできない。確かに、これもこれで効果的に振る舞わないと単なる口うるさいジジイの文句になってしまうので、説得力をもたせるために、同世代のサラリーマンではほとんど作れないレベルのセンスで会社案内を制作したり、技術の解説動画などを配信したりするわけである。