Scribble at 2023-05-13 22:26:18 Last modified: 2023-05-14 00:02:39

添付画像

シャープな切れ味のステンレス直線刃のツメキリ。ツメが飛び散りにくいストッパーケース付き。足の硬いツメに適したLサイズ。

119 | 貝印のツメキリポータルサイト

僕は職人あるいは職人技というものには敬意を払っているつもりだ。でも、客観的な評価の基準がないか評価を受けたことすらない人々による自己宣伝の類は(もし本当に優れた職人なり成果があるとしても)にわかに信用することはできないと思っている。これは広告系のコンテンツを制作する側で仕事をしてきたという事情から、はっきり言って商品開発や広告なんて(優れた事例もあるにせよ)大半はデタラメなものだと知ってるからだ。

僕は老眼になった頃から、自分が使うのに最適な爪切りを探していて、なかなか良いものがなくて爪ヤスリを使うようになった。そうして昨年のいつだったか、たまたま入って買い物をした薬局で見つけた爪切りが最も扱いやすいと気づいた。たぶん若い頃からも感じていたことだと思うのだが、爪切りが使い辛い理由は、爪切りの先端が安物だろうと高級品だろうと鏡面仕上げになっているからだ。50歳を過ぎた高齢者の一人として言わせてもらうが、老眼鏡をかけていても多くの人は乱視気味だったり目が疲れていて、目で奇麗に指先の像を結べないことが多い。したがって、爪と肉の境界が分かり辛くなって、爪を切るのがやや怖くなるのだ。僕は爪ヤスリを使う習慣ができたので、浅く切ってしまっても追いかけて爪ヤスリで整えられるが、そういう習慣がない人も多い事だろう。爪切りのエッジが鏡面仕上げになっていると、エッジが爪の先を反射してしまい、どこまで肉でどこからが爪なのか分かり難くなる。なので、先端を反射しにくく加工した金属で製造している事例はないものかと探していたわけである。

でも、薬局に売っている平凡な医療用の爪切りが金属の表面をかなりマットに加工していて(とはいえ、光を十分に吸収するような表面にはなっていない。そんなことをすると医療用には相応しくないほど値段が上がるからだろう)、反射しづらくなっていたことに気づいたのだった。さすがは医療用に製造されているだけのことはある。これこそ、プロダクト・デザインの好例だろう。宣伝でないことはご承知のうえで紹介しておくと、上記の貝印から出ている「119」という医療用具の爪切りだ。

そういや、このところドン・キホーテでもホーム・センターでも、黒い爪切りがやたらと販売されている。日本旅行の土産として買っていく外国からの観光客も多いのだろう。でも、あれは一見すると良さそうに見えるけれど、エッジは鏡面仕上げになっているので僕は使いたくない。やれ関孫六がどうの匠の技がどうだといくら宣伝されようと、爪切りは切れ味さえ良ければいいというものではない。そして、これは剃刀にも言える。髭を剃る人のことやスキン・ケアというコンセプトを全く考慮せずに、単にエッジの鋭さや切れ味ばかり追求するような「職人技」なんて、しょせんは廃れてもかまわない欠陥技能だ。見てくれや短期的な性能評価だけで判断を下す、未熟で愚かな時代には高く評価されたのかもしれないが、そういう評価の基準が向上したり改善しないという理屈は通用しない。もし仮に、現代の評価基準が昔の基準よりも、多くの利用者にとって改善されており、スキン・ケアという観点からも更に好ましいのであれば、1本あたり50円で売ってるカートリッジ式の安全剃刀の方が人間国宝の制作した日本剃刀よりも「絶対に優れている」と言って構わない。このような理屈に合致していて是々非々の議論は、世代論などという愚かな社会学の議論など関係なく、最近の若い人たちには違和感なく受け入れられるであろう。

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