Scribble at 2021-12-27 15:35:34 Last modified: 2021-12-27 15:51:15

東京海洋大学名誉教授でフィボナッチ協会の代表をされていたこともある、中村滋氏が『フィボナッチの数学』という本を書いていたようだ。アマゾンでも数年前から講談社ブルーバックスの一冊として出版されることが予告されていたため、これは是非とも一読したいと思っていたのだが、何度か予定が延期された後に、2021年12月末の現在はアマゾンからも書籍データが削除されているようだ。最後の予定が2021年10月14日だったから、もう欠番扱いになるのだろうとは思っていたが、これはこれで残念だ。

もちろん、黄金比の安易な扱いに警鐘を鳴らす(どころか侮蔑してきたわけだが)者の一人として、フィボナッチ協会のしかも数学者がどのように言及されるのかを、ただたんに冷やかしのつもりで待ち構えていたわけではない。

当たり前のことだが、自己相似的な形状を生成することが合理的であるという一つの見識を冷笑したり侮蔑する意図などないのであって、正方形の次に真円の何かを単純な規則性だけで生み出す方が奇怪であるという事実を否定するつもりなんてないのだ。僕が非難してきたのは、黄金比や白銀比を含む規則性について数学的・工学的に理解したり説明しようとしない人間が、安易に「自然の美」だとか「数学的な神秘」だのと、実は何もわかっていない御託を振り回して他人にウェブ・ページのデザインや工業デザインを指南したり、果ては株式投資の「法則」などと詐欺行為を働いていることだ。(簡単な話として、われわれ物理的に制約のある生物は、任意の実数を表す点がどこであるかを指し示すことなど絶対にできないし、そこが絶対に正しい位置を指しているかどうかを判定する方法など持っていないのである。それどころか、コンピュータの計算ですら厳密には近似でしかないのだ。数学的な議論を装う詐術は、こういう到達点に〈いつになっても到達できない〉という我々自身の限界を悪用しているだけである。)

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