Scribble at 2023-06-01 15:24:15 Last modified: unmodified

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純粋モデル理論については,言語やモデルの説明から始め,素モデル,体の理論,独立性や可算範疇性,強極小理論など,構造(モデル)を無限組合せ論的に分析するための基礎を丁寧に解説する.

応用モデル理論については,定義可能集合を分析するためなどに,いかにモデル理論的手法を用いるか,そしてどのような結果が得られるかを具体的に見ていく.

たとえば,Fraïssé構成法,付値体のモデル理論的扱い,ヒルベルト第5問題の一般化など,重要で歴史的に注目された応用や最近の研究結果を解説する.

【目次】

第I部 純粋モデル理論

第1章 基本事項

  1.1 稠密線形順序からモデル理論へ

  1.2 言語と構造

  1.3 完全理論

  1.4 コンパクト性定理

  1.5 量化記号消去

  1.6 M^eqと仮想元消去

  1.7 モデル完全性

  1.8 補遺

第2章 飽和モデル,素モデル

  2.1 タイプ

  2.2 飽和モデル

  2.3 タイプ排除定理

  2.4 素モデル,素拡大

  2.5 Morley階数

第3章 体の理論

  3.1 ACF

  3.2 RCF

  3.3 DCF

  3.4 SCF

第4章 独立性概念

  4.1 単純理論

  4.2 安定理論

  4.3 NIP,VCクラス

  4.4 Keisler測度と独立性

第5章 可算範疇性

  5.1 可算範疇性

  5.2 可算範疇性の特徴付け

  5.3 可算モデルの個数

第6章 強極小構造と非可算範疇性定理

  6.1 強極小構造

  6.2 強極小理論におけるMorley階数

  6.3 非可算範疇性

  6.4 内在的タイプ,分析可能タイプ

  6.5 全範疇性

第II部 応用モデル理論

第7章 Fraïssé構成法

  7.1 Fraïssé構成法

  7.2 Fraïssé極限としてのランダムグラフ

  7.3 射影平面

  7.4 Baldwinの非デザルグ的射影平面

第8章 付値体のモデル理論

  8.1 付値と付値体

  8.2 ACVF

  8.3 Ax–Kochen–Ershov定理

  8.4 ポアンカレ級数

第9章 順序極小構造

  9.1 定義と基本性質

  9.2 胞体分割定理

  9.3 R_an,R_exp,R_an,exp

第10章 整数論と数理論理学

  10.1 Q上のヒルベルト第10問題

  10.2 Qの中でZを定義する

  10.3 モデル理論的考察

  10.4 Qの拡大体の中で整数環を定義する

第11章 ヒルベルト第5問題の一般化とPillay予想

  11.1 ヒルベルト第5問題

  11.2 Pillay予想

『モデル理論』(板井昌典/著、森北出版、2023)

基礎と応用を扱う著作がいきなり出てきていたので驚いたのだが、ようやくまとまったテキストが出てきて喜ばしい。正直、国内で読んだ人がどういうまともな業績を出せたのかはなはだ疑わしい圏論の翻訳や通俗的な体裁の愚劣なエッセイばかり出版し続けるよりも、色々な分野のテキストを充実させる方がいいと思うんだよね。確かに、マックレーンの翻訳とか大熊さんの難しい教科書しかなかった時代に比べたら良いとは思うけれど、それこそネットいなごのように熱病かと思うような出版ブームを煽ったところで、そもそも論理学の勉強すらしてない人がいきなり圏論の本を読んで何ができると思っているのか。

とりわけ、日本では IT 系の技術者が買ってくれるという皮算用をしていただろうし、実際に買ったエンジニアはいると思うが、都内の無能な IT ゼネコンやインチキ・ベンチャーの諸君に聞きたいが、それで圏論で君らはどういう業績を残したのかね。総務省案件で圏論の教科書からコピペしたような蘊蓄を書いて、1cm ほど企画書を分厚くして見積もりの金額を上乗せできたていどだろう? きみたちみたいな NEC やアクセンチュアで炎上案件ばかり生み出すしか取り柄のない無能にできることは。

ということで、国内では殆ど河合教育研究所の薄い本か新井さんのテキストの一部でしかまともに取り上げられていなかったモデル理論のテキストが出たのはいいが、またぞろ何かのブームを煽って続々と出されてもあまり意味はないと思う。他の出版社が追随してモデル理論の教科書を出すなら、たとえば Hodges のデカい方を訳すとか、それくらいの「貢献」と呼ぶに値するようなことをやるべきだろう。イージーに研究者の雑文を寄せ集めて出すような愚行は重ねないように願いたい。

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