Scribble at 2024-08-15 07:42:24 Last modified: 2024-08-19 12:27:56
そろそろ会社で生成 AI のガイドラインを起案しようとしていて、今年の4月に経産省から発表された政府のガイドラインも参考にして文章を練っている。そして、生成 AI の概略を解説する参考として、本書も手に入れて通読してみた。よく書けている本だと思う。岩波では、このシリーズだけでなく、「岩波ブックレット」という(おおむね左翼のビラだと思われているようだが)シリーズにも良書が幾つかあり、VSI ほどの百科全書的なスタンスで編集されているわけではないと思うが、それぞれの話題について良質な見通しを与えてくれるタイトルが幾つかある。なお、以下の文章はアマゾンのレビューとして一度は投稿したものだが、取り下げてこちらに掲載しておく。
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本書は、ディープ・ラーニングの原理について、分かってきたことと分からないことを簡潔に整理して、数学的な理解によって次世代にも活用される理論として定式化する必要を説いている。まだ本書が出てから3年ていどしか経っていないが、いまや生成 AI は家庭で子供が使っているパソコンにインストールして(性能はともかく)ローカル・マシンで動かせるほど普及が始まっている。残念ながら市井で普及している大半の動機はスパムの下書きとエロ画像の出力といういかがわしいもののようだが、こうした技術やビジネス・モデルの一部はこれまでも風俗という分野で先んじて普及したり展開してきたのも事実だ(別に露悪的にフェミニストや都内の軟弱 Z 世代から顰蹙を買うであろうスケベな話をしたいわけではない。こういう歴史的・社会学的にきちんと調べれば分かることを、科学哲学者だからといって無視したり軽視してもしょうがない)。ともかく応用の速さを皮肉な意味で感じさせられる本でもあった(だからいけないとは言っていない。古いというだけで馬鹿にするから、本書で書かれているように車輪を再発明するようなことになるのである。無能や凡人は四の五の言わず黙って古典を学ぶべきだ)。
ちなみに、「どうして横書きにしないのか」という非難を込めた疑問を書いているレビューがあり、どのみち読みもしないくせに80人も「参考になった」などと評価しているようだが、このていどの数式を縦に傾けただけで視認できなくなるというのは、逆にこういう人々には空間認知能力の生理的な問題を疑うほうがよいと思う。せっかくの子供じみた選民意識に冷水を浴びせるのは大人げないと思いつつ哲学者としての老婆心で言わせてもらうが、こんな横書きを当前視することで「理系」の自己証明や自意識強化になると思ってるなら、それは非常に深刻な自己欺瞞だと言いたい。