Scribble at 2021-11-05 22:39:30 Last modified: 2021-11-10 12:15:04

高校生に参考書や問題集の選び方を一つ指南するなら、書店で手に取ってみること、これだけだ。

ウェブで山ほど書評は読めるけど、ほぼ全てが単なる雑感でしかない。何ページのここの解説がいいと実例を使って評価している文章が殆どないのは誰でも知ってる筈だ。失礼を承知で言えば、おおよそ8割ていどの書評は、恐らく実物を読んでいないと思う。他人のレビューを読んだ印象だけで書いている可能性が高い、イカサマのレビューや比較記事ではないか。

そもそも、専任の予備校講師でもない人間が、高校の参考書を社会人や大学生になってから何冊も買って読み比べる目的や動機なんて、ブログ記事を書いてアクセスを稼いだりアフィリエイトで稼いだり YouTube で広告料を稼ぐくらいしかないだろう。そんな目的でやってる連中が、教育なり学問として公平、冷静、かつ適切な比較や評価なんて、できるわけがないのだ。しかも、その大半はただの学生や社会人だ。その分野を専門にしている学者でもなければ、絶大なインパクトを業界に与える技術や商品を開発した実務家でもないなら、〈せいぜい東大やプリンストン大学に入ったというだけの凡庸なガキ〉でしかない。

したがって、ジャケ買いはもとより、他人の書評だけで注文することは高いリスクがある。そして更に、仮に書評を書いているのが大学の教員だとしても、大学の教員は自分が関わっている分野の問題なんて、昼寝してても解けたような連中だから、とりわけ苦手科目を勉強する場合は、逆にそういう人たちの言葉は信用に値しない。それは、自然科学の話題について初心者向けと称する講談社ブルーバックスの大半の本が、実は初心者が読んでも分からない、できる生徒向けの読み物でしかないという事実が、それを証明している。(オンラインでも、ブルーバックスの本を批評してる人の大半が、その分野のプロパーや実務家や数学オタクだったりする。自然科学が苦手な生徒や学生はもちろん、ごく普通の社会人も、自然系の話題に関心があってもブルーバックスなんて実は読まないのだ。)

とは言え、近くに大型書店がない地方の高校生はどうすればいいのか。オンラインで購入するしか手がないとすれば、参考書を一冊だけ買うのに夜行バスへ乗るわけにも行かないだろうから、ともかくオンラインで買うしかあるまい。それなら、大声では言えないが、恐らくリスクが少ないのは次のような方法だろう。カスタマー・レビューとオンラインのブログ記事、そして何と言っても学校の先生に聞いて3冊ほど候補を洗い出し、少なくとも3人以上でお金を集めて3冊全てを買うことだ(割り勘なら、1冊だけを自分で買うていどの金額だけ出せばいい。良書とされている本は、おおよそ似たような価格帯だからだ)。そして、読み比べて最も良いものを熟読する。他の人も同じ本を読むなら、何らかのルールを作って読み回せばいい。

では次に、当然の疑問だと思うが、友達がいない人はどうすればいいのか。あるいは友達がいても、自分だけ物理が苦手だとか、自分だけ英語が不得意だとか、あるいは受験で地理を選択するのが自分だけだという場合もあろう。自分だけしか、その科目の平易で包括的な(あるいは逆にハイ・レベルな)参考書や問題集を買おうと思う人がいないなら、どうすればいいだろうか。ここで悩むことになる理由を改めて確認すると、クズを掴んでしまえば、クズみたいな参考書を通読することはないから時間はさほど無駄にならないだろうが、書い直す必要はあろうから、お金が無駄になる。かといって、高校の参考書なんて海賊版のサイトに PDF がアップロードされてる事例は殆どないし、アマゾンや出版社のサイトで見本の何ページかを読めるわけでもない。こういう場合は、幾つの教科の本をそのようにして読む必要があるかは知らないが、やはり投資だと思ってアルバイトをしてお金をつくるしかないだろう。そして、選び方としてはネットで情報を集めるしかない。

もちろん、冒頭から書いているように、ネットに掲載されている情報の大半はデタラメで、仮にまともな情報を得られたとしても、本当に自分にとって扱いやすいかどうかは、どうしても実物を手に取るしか確認のしようがない。それを実際に買うよりも前にできないなら、あるていど見込みのありそうな本を実際に買って、書店で手に取るのと同じことを自宅でやる他にないからだ。そのため、手に入れる方法としてはヤフオクやメルカリなどで古本を物色するのがいいだろう。

但し名著とされるものは逆に高額で取引されているため、「復習」とか「勉強しなおし」などと称してジジイ、なぜかこういうのは圧倒的にジジイなのが大学進学率の偏りを反映しているわけだが、そうした人々が馬鹿みたいな値段で喜んで買い漁っているような本は、どれほどネットでの評価が高くても手を出さないほうがいい。というか、そもそもの話からすれば、参考書がなければ勉強できないなんてことはないのだ。これは考え方や自分の行動力の問題でもあるから、いちがいに誰でも実行できるわけではないが、実際に僕の同級生は教科書だけで京大に入って、いまは北陸の大学で経済学の教授をしている。もともと頭がいいという有利な条件があるとしても、彼のもう一つの強みは勉強についての考え方だと思う。たとえば教科書を基準にして周りの生活環境にどんどん学んだ知識を当てはめてみるとか、あるいは学んだことから「何が言えるか」をどんどん推論して仮説を立ててみるといった、或る種の習慣をつけることが効果的でもある。

あるいは、或るていどの行動力や交渉力があれば、他に幾つか方法はある。たとえば、自分の住む地域に大学生がいたら、その人が使っていた参考書を借りるという手がある。社会人でも、かつて自分で使っていた教科書や参考書を残している人もいる筈だ。

[追記:2021-11-10]

こうは書いたが、やはり実物を手にとって判断すること(それが思い込みや第一印象という偏見だろうと)を軽視するのは良くない気がする。上の段落で、地方や僻地の生徒が参考書や問題集を一人で選んで買うしか場合は、バイトして金を稼いで、紛い物を間違って手にしても書いなおせるようにしておくのがいいと書いたのだが、やはりそれも現実的ではないように思う。それに、僻地で高校生ができるアルバイトなんてないかもしれないからだ。現実的な就職すら難しいような地区、つまりコンビニエンス・ストアがあるかどうかもわからないような土地で、高校生がアルバイトするような仕事があるとは思えない。

すると、一発勝負となるが、やはり都市部の大型書店に出向いて必要な本をまとめて買って帰る方が現実的な手段ということになるのだろう。ちなみに、この記事では、そもそも高校生が受験用に参考書や問題集を買う金を親からもらえる境遇にあると仮定しているが、ここを仮定できない境遇の生徒については、もうこれは別の問題になってくるので、気の毒だがここでは考慮しない。

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