Scribble at 2025-07-10 09:32:26 Last modified: unmodified
Daniel氏は2025年7月3日に、「Glass」というリアルタイム会議アシスタントをわずか4日間で開発し、Apache 2.0ライセンスの下でオープンソースとしてリリースしたと発表しました。これは、画面キャプチャと音声分析を使ってビデオ会議やインタビュー、プレゼンテーションの内容に応じて、AIアシスタントがさまざまな対応をしてくれるというツールです。 / しかし、soham氏はこれに対し、Daniel氏が4日間で開発したわけではなく、自身がGPLv3ライセンスで公開していた「cheating-daddy」という同様のリアルタイム会議アシスタントツールのコードを盗用しそれにApache 2.0ライセンスを付けて「スタートアップ」と称しているに過ぎないと強く非難しました。
僕は20年にわたってナショナル・クライアントの案件でシステム開発やサーバ構築を担ってきたエンジニアとして、あからさまにポジション・トークとして言わせてもらうのだが、たいていの開発手法とか開発ツールの類は、要するにそれを扱うに足りる教養や知性や経験やスキルあるいは人間性までもが、一定の水準で求める条件として満たされていないと、十分に能力を発揮できないし、そもそもまともに利用できないと思っている。まず、僕がそういう議論をするだけの資格があるかどうかを疑う人は多いだろうから、とりあえず NDA に抵触しない範囲で disclosure しておくと、JR 西日本コミュニケーションズとの仕事で公開していた「さよなら0系新幹線」のバックエンドと投稿内容の管理システムを開発したのは僕であり、もちろん東京インタラクティブ・アド・アワードに入賞しているので、調べたらわかることだ。他にも、最近では某団体が主催していた「子育て川柳」のサーバを構築・運用した実績もあるし、シャープがテレビの販促キャンペーンで運営したスクラッチのサイトをサーバ構築からシステム開発まで単独で担当したという実績もある。この程度を説明すれば、もちろん偉そうに自慢したいわけではないが、場末のホームページ屋さんで CGI のフォームを「システム実装」などと称してサーバにコピペしてるようなオッサンとは格が違うということだけはわかるだろう。
そのうえで申し上げると、僕はコーディングやシステム設計やテストといった各種の開発工程に生成 AI を活用するというトレンドそのものは否定しない。しかし、僕が実際に生成 AI を利用してきた3年ほどの経験で言うと、生成 AI にどれだけ的確なプロンプトを入力したり、精度の高いコードを参照させて RAG を組み上げたりモデル・データをファイン・チューニングしてみようと、まだまだ僕ら自身が検証しない限り、吐き出されたコードを手放しで実装するなんてことはできないし、すべきでもない。いまや場末だろうと僕らのようなレベルであろうと、殆どのコーダやプログラマやエンジニアが生成 AI を実務に利用していると考えられるので、もはや要件定義において「生成 AI の利用についての可否」を問うこと自体がナンセンスとなりつつある。というか、どういう契約を交わそうと使う人は使うだろう。確かに、限定された用途での生産性は劇的に向上するのは実感としてもわかるので、僕も生成 AI を活用するべきであろうとは思う。だが、それはあくまでも僕らが「活用する」という立場で主導権を握っている限りでの話だ。そして、そういう条件で生成 AI を運用している限り、僕ら自身が生成されたコードを丁寧に検証したり吟味する工程は省けないのだから、コードが大量になればなるほど検証の時間もかかる。検証そのものを生成 AI に分担させることはできるかもしれないが、だからといって人がやるべき検証の手間が省けるわけではないし、その検証ツールをどうやって検証するのかという問題は残る。
というわけで、上の事例で示されるように、オンライン・サービスのシステムを4日間で開発するなんてことは、プロの開発者として言うなら、そもそもできるわけがないのである。逆に言えば、4日間で動作を検証できる「ウェブ・アプリケーション」なんてものは、せいぜいブラウザでアクセスしてきたユーザに「あなたは◯◯番目の訪問者です!」と表示するプログラムていどのものでしかないと思う(初心者に注釈しておくが、このような文言を表示するだけでも Cookie を使って重複をチェックしたりと、表には現れない仕組みを考える必要がある)。よって、他人のソース・コードを「フォーク」と言おうがコピペしようが、結局は自分で何もしないで自分のプロダクトとしてリリースするような人間は、どれほど謝辞を並べていようとイカサマ師であることに変わりはない(フォークそのものは問題ないが、ふつうはオリジナルの開発者に相談したり連絡するものだろう)。