Scribble at 2025-08-15 15:18:33 Last modified: 2025-08-15 18:55:20

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生成AI技術は目覚ましい進歩を続けています。そのため、表面的なトレンドを追うだけでは、そのしくみを理解することが困難になっています。こうした状況において、本書は生成AIを支える理論的基礎について原論文レベルまで深く踏み込んで解説し、読者が技術の核心部分を理解できるよう導く一冊です。

原論文から解き明かす生成AI

さきほど出社していた帰りに、久しぶりなのだがジュンク堂の大阪本店へ立ち寄って、この本が出ていたので買ってきた。Stable Diffusion のユーザとして原理的な仕組みや背景にある理論を理解したいという動機がある人なら、機械学習のテキストやオライリーの色々な本を読むことはあろうが、arXiv の論文まで読む人はプロパーくらいのものだろうと思う(ブログでとりあえずペダンティックにリンクだけして見せる素人は多いわけだが、実際に読んでいる人間なんて画像生成 AI のブログを運営している人間のうち1,000人に1人もいない)。そういう意味では、かなり野心的な本と言ってよいのだろうけど、たぶん出版社の目論見としては、従来の機械学習や AI 関連の理論書みたいなレベルの本と同じく、「持ってることがステータスになる」ことを期待しているのだろう。

ともあれ、本書は古典的かつ基礎的な業績を集めて解説したり、演習問題を掲載して理解に努めている。生成 AI の基礎や背景を丁寧に理解したりたどるには、よい手引になると思う。なお、理数系のテキストによくあることだが、演習問題だけ掲載して答えがないという体裁を取っているが、本書では解答が GitHub のサポート・サイトに掲載されている。これは、体裁としては昔のような「解答を載せない理数系のテキスト」と同じだが、サポート・サイトを活用することで、皮肉なことに優れたサポートになっていると思う。なぜなら、解答を掲載しない理由として「紙幅の都合で云々」と言われたりするが、ウェブ・ページにはそういう不合理な理由で解答を掲載しないという怠慢(僕は、これは単純に怠慢だと思う。解答を印刷してテキストの値段が100円ほど上がったくらいで「革命的プロレタリアートの学習意欲を阻害する反動的な編集であーる」などとデモを始める学生なんているわけないからだ)を軽やかに粉砕できる利便性というものがある。

そして、ウェブ・ページを活用すれば、分量を問わずに掲載できるだけでなく、他の切実な利点も読者に提供できる。なぜなら、とりわけ理数系の教科書でよくあることなのだが、演習問題の解答が間違っているということがあるからだ。もちろん、有能な学生は自力で間違いを発見して訂正したり、出版社に指摘して訂正を求めたりできるが、そういう読者を基準にものを書くのは傲慢であり怠慢というものだ。サポート・ページであれば、仮に演習の解答(もちろん本文や演習問題の文章も含めて)が間違って印刷されようと、それを訂正できるし、なんなら訂正した解答すら間違っていたとしても更に訂正できる。実際、学問のプロセスや教科書の出版というプロセスは、そういうことを繰り返していって内容が鍛えられ洗練されるという実情もあろう。僕が、たとえば高木の『解析概論』のように何年もかけて後進の研究者が解説したり訂正していくような本こそ優れた教科書であり、毎年のように新学期になると出版されるハエのような新刊教科書など、訂正も向上もされないことが多いわけで、そんなゴミを出版するのは文化的な犯罪だと言っているのは、そういう理由からである。

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