Scribble at 2026-09-24 17:15:43 Last modified: unmodified

添付画像

2023年の6月に、自宅のマシンへ初めて Stable Diffusion 1.5 を入れてから、かれこれ3年が経過した。ここ最近の、特に画像生成 AI に関わるメディアや投稿サイトの動向を眺めていると、一時期の熱狂的なブームと言えるような様子は減退している印象を受ける。

2026年9月現在、標準的なユーザー、つまり30万円以下のデスクトップ・マシンを自宅で運用するユーザが使っている画像生成用の拡散モデルとしては、二次元イラスト系なら Anima と Illustrious の系統が圧倒的に多いし、フォトリアル系なら Krea 2 と Qwen あたりだ。他にも色々なモデルはリリースされているけれど、色々な意味で実質的に頭打ちだろうというのが僕の率直な印象だ。毎週のように新しいモデルを落としてはマージのレシピを試したり、パラメータを微調整して一喜一憂するような狂騒は、完全に過去のものになったと言っていい。もちろん、拡散モデル自体の描画性能や構図の制御力が上がってきて、ホーム・ユースとしては十分という成熟期に入ったからでもあるが、ローカル環境でメディアを生成するブームが失速しつつある理由は、もっと別の、極めて現実的な事情や理由にあると思う。

まず第一に、Civitai を始めとする画像やモデルの共有サイトで、実写系のモデルが事実上締め出され、アニメや漫画のキャラしか扱えなくなってしまったこと、そしてそのキャラクター LoRA すら、需要のあるものはほぼ出揃ってしまったことだ。実在の人物の肖像権という問題やディープ・フェイク対策、各国での法規制、さらには決済代行会社からの締め付けによって、実写系のモデルを扱っていたコミュニティは一気に梯子を外された。その結果、規制の網にかかりにくい二次元アニメや漫画のキャラ、あるいは特定の絵柄ばかりが量産されることになったわけだが、それも人気作の主要キャラや定番の衣装、あるいは(エロの)ポーズや構図の LoRA が出尽くしてしまえば、あとは似たようなモデルの再生産でしかない。どれだけ精緻な LoRA が新しく投稿されようが、「ああ、またこれか」という域を出ず、コミュニティ全体の求心力が急速に失われていくのは火を見るより明らかだった。

具体的な話になるが、Illustrious XL の後続としてリリースされた Anima ですら、実際には Illustrous ほどユーザが増えているわけではない。いまだに、画像やモデルの多くは Illustrous をベースとするモデルなのだ。理由はよく分からないが、Anima は自然文でプロンプトを作成する自由度が高いため、逆に言えば英作文するのが面倒臭くて、これまでのようにキーワードをカンマ区切りで並べるだけの方がいいという人たちにすれば、劇的に質が向上するわけでもない Anima を積極的に選ぶ理由がないのだろう。あと、この手のモデルを使うユーザの殆どは、ブログや X でどれほど機械学習の理論を語っていようと、しょせんは目を充血させながらズリネタを作っている中高生やキモオタ野郎にすぎないので、単純に英作文ができないという理由もあるのだろう。

第二に、これも有力な理由だと思うのは、静止画の生成を散々やってきた多くの人たちが次に期待していた動画の生成において、多くのカジュアル・ユーザが直面した計算資源の壁が高すぎたことだ。静止画であれば、8~16 GB 程度の VRAM を積んだ GPU でも、量子化や各種の最適化技術を使えば十分に実用的な出力が得られた。ところが、フレーム間の一貫性を保ちながら動かす動画生成モデルとなると話はまるで別で、まともに動かそうとすれば最低でも 24GB、少し本格的なことをやろうとすればそれ以上の VRAM を平然と要求してくる。

そこに追い打ちをかけたのが、近年のインフレとメモリ価格の高騰だ。為替の変動や AI サーバー需要の過熱もあって、大容量の VRAM を積んだ上位グレードのグラフィック・ボードやワークステーションでなくとも、個人のホビー用途としては完全に馬鹿げた水準まで値段が跳ね上がってしまった。

おまけに、自宅のマシンで手軽に扱える動画生成モデル自体がほとんど存在しない。静止画なら数秒から数十秒でガチャを回して試行錯誤できたものが、動画となると短いクリップを1本レンダリングするだけで何十分も待たされる。そんな重い処理を自宅でやるくらいなら、Runway のようなクラウド・サービスに月額課金して、巨大なデータセンターの計算資源を叩いたほうが、電気代やマシンの寿命、そして何より作業時間の効率を考えても圧倒的に合理的だ。でも、クラウド・サービスには致命的な弱点がある・・・エロは扱えないということだ(笑)。結果として、個人がローカルだろうとクラウドだろうと動画の生成を手軽に導入する手立てが圧倒的に不足している状況がぜんぜん改善されていないのである。

  1. もっと新しいノート <<
  2. >> もっと古いノート

冒頭に戻る