Scribble at 2026-05-25 09:09:42 Last modified: 2026-05-25 09:12:28

添付画像

Somewhere between 'ask Claude for a quick opinion' and 'Claude is writing our Jira tickets,' we lost the plot. AI agents are brilliant implementers. They're also confidently wrong about every decision that matters. And when it all falls over, they won't be the ones carrying the bag.

Claude Is Not Your Architect. Stop Letting It Pretend.

この手の議論を紹介するのは、今回で最後にする。もう僕らのようなレベルのエンジニアやシステム・アーキテクトにとっては、上のブログ記事が主張するような話は常識となっている。僕らにとっては、もはやこういう批評を繰り返して読んだり、こういう批評で紹介される別のケースを知って裏打ちを強くしたとしても、大して知見が高まったり仕事の質が向上するわけではない。

AI(Claude/ChatGPT/Copilot)は、システムのアーキテクトではなく、あくまで実装支援ツールである。アーキテクチャ設計の判断を AI に任せると、僕らが暗黙知や常識で弁えている与件や背景知識や事情や脈絡を理解しないまま「イイ感じ(もっともらしい設計)」のテキストだけを提示するので、組織の意思決定プロセスを壊してしまうからだ。AI はパターン・マッチングで回答のテキストを構築しており、組織の文脈、制約、あるいは実装チームの能力といった与件を理解していない。それでも自信満々で正しそうに聞こえる応答を表示するので、そうした与件を知らないか理解しない無能なエンジニアほど疑わなくなる。その結果、AI が彼らにとっては事実上のシステム・アーキテクトや上司になってしまい、無能あるいは凡庸な人材で構成された多くのチームが AI に盲従するようになってしまう。

AI は本質的に我々の入力(プロンプト)に対して「同意的」な応答をすることが原則であるとトレーニングされているので、特殊な条件を与えない限りは反対しない傾向がある。よって、どんな馬鹿げたアイデアでも肯定したり、複雑で良くないアーキテクチャをヒトから提案されても肯定してしまうことが多い。よって、無能なエンジニアほど肯定的に扱われることが多くなり、仕事の質が平均して下がっていく。だが本来、システム・アーキテクトが最も価値を出すのは、愚かなアイデアやリスクの高い設計に対して明解に "No" と言うことであり、複雑さを拒否することや要求の本質を掘り下げることにある。だが AI は、こういう冷徹な態度をとってくれない。そして、AI の応答内容は、一見すると正しそうでベストプラクティスに見える。しかし実際は、平均的な企業向けの平均的な設計であり、あなたの組織やプロジェクトが置かれている独特な要件や制約を考慮していない。その結果として、誰のための設計でもない、プログラミング言語の教科書で紹介されるサンプルのようなものが出来上がる。

ここで、よく「シニアのソフトウェア・エンジニアが AI の応答内容をレビューするから大丈夫だ」という話が出てくるのだが、実はこれは妄想・錯覚である。AI の提案は整っていて、正しそうに見えるため、忙しい上級エンジニアの多くは深く反論し辛いのが実情だからだ。つまり、あなたの会社の「シニアのソフトウェア・エンジニア」が、自分の個室でふだんはエロ本か『プレジデント』の記事を読んでいるような「部長様」と同じ待遇なら十分な時間はあるかもしれないが、現実のソフトウェア・エンジニアは上級職でもコードを丁寧にレビューする余裕などないのである。そして、シニアのソフトウェア・エンジニアが在籍しているとしても、多くの会社では、彼らにレビューさせた結果を眺めて「Claude が20分で作ったのに、あなたは反対して数日分になる作業をチームにやりなおさせるの?」という空気が社内に生まれて、コード・レビューというプロセスそのものが「工期」という圧力でショートカットされてしまうのが実情だろう。

そして、いつもの話だが、何か失敗が生じても AI(Claude)は責任をとってくれない。何かあったとき、夜中に起こされて障害に対応するのは生物の個体(ヒト)である。しかしその生物は、AI に依存しすぎる会社では自分が全く設計に関与していないシステムを運用することになるので、どういう設計方針で動いているのか分からないものを扱うことになる。

結論として、生成 AI は僕らの与えたデザインや設計を反映してイラストやコードを短時間で組み立てて示してくれるが、それをさせているのが僕ら自身だ。何十年も前から言われているように、"Garbage in, garbage out." なのであって、僕らが適切に考えて配慮した設計をもとに AI のプロンプトを与えなくては、見栄えのいいガラクタしか生まれない。そして、無能な人間であるほど、見栄えがいいだけのガラクタを本物の成果と見分けられないのだ。

  1. もっと新しいノート <<
  2. >> もっと古いノート

冒頭に戻る