Scribble at 2024-08-26 11:50:09 Last modified: unmodified
これ、Hacker News で紹介(自己宣伝)されていたときに見つけて、ここでも取り上げたような気がする。でもまぁ、詳しい評価は忘れてしまったし、どのみち当時とは機能も違うだろうから、初めて見つけたのと同じように扱おう。
まず、僕は有料だろうと無料だろうと、そのこと自体に優劣は感じない。なんでもかんでも無料でいいとは思わないし、実際にそんなことが現実的でも理想でもないことは、企業人としてというよりもネットを利用してきた社会人としてそう感じている。無料でソフトウェアを改良したりリリースし続けている人もいるにはいるが、やはり当人が亡くなったり、あるいは何らかの理由でメンテナンスする意欲を失ってしまうと、実質的にプロダクトなりプロジェクトは終わってしまう。テキスト・エディタの話題だから事例をテキスト・エディタの中から選ぶと、たとえば xyzzy なんかはそうだ。もちろん、僕は xyzzy のオリジナル開発者である亀井哲弥氏を非難する意図はない。あるいは Atom や Brackets のように、CSR だかなんだか知らないが企業内あるいは企業体のプロジェクトとしてサポートしている無料ソフトの場合は、開発者の意志とは異なる事情で開発が止まってしまう場合が多い。しかし、だから法人が有料でリリースしている方が手堅いのかというと、それもまた軽率な判断だろう。企業が開発している有料の(しかも、それなりに高額な場合もある)ソフトウェアでも、わずか数年で放棄される場合だってある。テキスト・エディタでは事例がほとんどないので幸いだが、スマートフォンのアプリケーションなどでは数多くの事例があるし、そもそもゲームというソフトウェアのジャンルでは月額課金のサービスでリリースした MMORPG が数ヶ月後にサービス終了へ至ることなど日常茶飯事のことだ。
ということなので、この Notion というソフトウェアなりサービスについても、これが有料だろうと無料だろうと、それはとくに大きな問題でもなければ論点でもない。やはり大きな論点となるのは、もちろん「こういうことをするのに、わざわざ専用の新しいツールを、しかもお金を払って導入する必然性なり必要があるのか」ということに尽きる(もちろん、他の条件が同じなら無料のほうがいいに決まっている)。簡単に言えば、しょせんはテキスト・データをどう運用するかというだけの話でしかないわけで、Windows ならメモ帳、Linux なら nano や vi を使えばいいものを、わざわざこういう専用の特殊なツールでの管理・運用という体制をとってまで大きな利得が期待できるのかということだ。企業として考えようと、個人として考えようと、この論点が重要であることは同じだろう。
もちろんだが、そもそもメモ帳や nano あるいは Windows や Linux ですら「特殊な」環境であることに違いはない。特定の OS 、なかんずく特定のソフトウェアを使うということは、コンピューティングにとっての本質でも不可避的な条件でもなんでもないからだ。われわれが求めているのはデータであるが、それが何ビットのエンコーディングで保存されたデータであろうと本質ではないし、そのデータを使ったコンピューティング、そしてコンピューティングの結果を利用した現実の成果が結局はコンピュータを使う目的なのである。この話をゲームに置き換えても、僕らはゲームを楽しむことが目的なのであって、GeForce RTX 2060 という特定のグラフィック・カードにデータを処理させることを目的にマウスやジョイスティックを操作しているわけではあるまい。
しかし、所定の目的を達するには、どうしても特定の道具なり処理方法を選んで依存しなくてはいけないのが現実だ。それゆえ、何らかのパソコンという機械を選ばなくてはいけないし、何らかの OS を選び、何らかの入出力デバイスを選び、何らかのソフトウェアを選ばなくてはいけない。大袈裟に言えば、自分の生活や仕事の道具として一つのアプリケーションを導入するかどうか思案したり吟味したり選ぶというのは、そういう事情でやっていることなのである。したがって、なるべく本質的な目的や処理内容と関係のない事情で不合理な選択や不適切な選択肢を押し付けられるのは避けたいわけで、なんだかんだ言っても「オープン・ソース」の理念とかフリーソフトウェア運動の本質はそういうところにあるのだ。
ということで、上記のようなソフトウェアが、果たしてどのていどの効用があり、このようなサービスにロック・インしてしまうリスクがあったとしても選択するべき何らかの大きな期待や価値があるのかというと、まぁそこまで大袈裟なお題目で考えなくても、「ない」という答えになってしまうんだよね。しかも、ただのエディタではなくテキスト情報のアーカイブとして考えるなら無料プランではスペックな不十分であり、サブスクにすると最低でも月額1,500円はかかる。年間のコストしては18,000円だ。これを、たとえば企業として既に利用しているグループウェアの文書作成ツール(Google Workspace なら Gooel Docs とか)があるのに、わざわざ別の契約を増やしてコストをかけるだけの意味があるかと言われると、ぜんぜんそうは思わない。
まず、僕がこの手のアプリケーションで気になるのは、そのアプリケーションの画面だけで意味を為すようなレイアウトやプレゼンテーションに、オープンな規格として汎用性があるのかどうかわからないということだ。このアプリケーションの画面上では、箇条書きとしてキレイに表示されることは分かるのだが、これを別のテキスト・エディタで編集するときには、どういう形式でエクスポートされるのか。そもそも別のソフトウェアで編集できるようにエクスポートできるものなのかもわからない。こういう、機能面だけでなく look and feel としてのロック・インに依存してしまうのは、コンピュータを使ったデータ処理という本来の目的からすると不必要な依存関係でしかない。そして多くの人々は、こういう「クールなソフトウェア」の UI だけに惹かれてしまう。もちろん、UI によってデータの扱い方に色々な工夫ができたり、新しいデータの理解が生まれることだってあるだろうから、無意味や邪魔だとは思わないが、しかしデータ処理の本質でないという事実は変わらないのであって、不用意に UI の美しさや格好良さだけに評価の基準を置いてしまうのは良くない。そして、僕が Notion のサイトで色々と見た限りでは、そういうところを除外すると、あまり有益な特徴が残らないように思う。AI が使えると言われても、それ追加料金だし、追加料金を出して月額3,000円かけるなら、既に色々な似たサービスがある。