Scribble at 2022-04-13 09:54:48 Last modified: 2022-04-13 10:05:30

世の多くのクリエイターに聞いてみたいのだが、一度でも Photoshop CC 2022 に搭載されている「ニューラル・フィルター」なるものが動いただろうか。これ、僕の環境であらゆる写真や画像で全てのフィルターを試してみたのだが、いまのところ一つとして画像にフィルターを適用できた試しがなく、すべてエラーで適用不能となってしまう。これでは必要のないガラクタに高額なお金を会社として払っているか、あるいは Adobe 社の「公開テスト」にこちらから金を払って参加させられているのも同然だ。そもそも、Adobe が何年も前から反トラスト法違反(日本で言う独占禁止法違反)の疑いをかけられて調査されているのは周知の事実であり、圧倒的なシェアにあぐらをかいて何をやってもいいはずがないのは明らかなのだが、現在でもこうしてクズみたいなアプリケーションを作り続けて売り続けているのは由々しき事であろう。

とはいえ、こんな機能が動こうが動くまいが、僕にとっては興味本位で使っているだけなので、プロのデザイナーとして言えばどうでもいいと言えばどうでもいいことだ。

簡単に言えば、僕は Photoshop を15年以上はデザイナーの端くれとして使っているが、Photoshop で納品物を制作するにあたって頻繁に使う機能は10個もない。それこそ、画像の拡縮とかトリミングといった画像の編集ソフトなら標準的と言ってよい機能や、せいぜいシャープネスやぼかし(しかも殆ど「ガウスぼかし」のみ)など、きわめて少ない。そして、それ以外の数多くの機能を使わなければプロとして十分な「クリエーティブ」を提供できないかどうかと問われても、そんな不都合は何もないと言える。したがって、いまでも動くなら Microsoft の FrontPage というウェブ・ページ制作ツールに付属していた ImageComposer という画像編集ソフトや、macromedia Fireworks でも最新の案件に対応するビジュアル・コンテンツを制作することだってできる。

というか、ツールの違いくらいで納品物を何も作れなくなるような人間を、ふつうは「プロのデザイナー」とは言わないものだ(実務として言えば、たとえばパソコンが故障したか手元になければ、紙切れへ描いたアイデアやカンプをどこかへ持ち込んで代わりに誰かへ制作を依頼すればいいだけだ)。弘法大師が筆を選ばなかったという故事は、現代において呉竹やぺんてるの筆ペンで書いても達筆だったろうなんて意味ではない。真のデザイナーというものは、道具を使う以前の段階で(あるいは道具に実装を制約される〈落とし込み〉から自由なところで)勝負しているのである。

そもそも、われわれデザイナーが「デザイン」なるものをしているのは、ドローイングとかスケッチとかアイデアの発案という活動に本質があり、Illustrator や Photoshop のオペレーションなんて実際のところ自分の手でやる必要などない(だからこそ、広告代理店とかには実制作しない「アート・ディレクター」というポジションがあって、彼らが「デザイン」を統括している)。したがって、機能としてあれができるとかこれができないなどという制約は、はっきり言ってデザイナーとしてのわれわれの才能と何の関係もないものである。アプリケーションごとき作り物の限界が、われわれ人間の才能の限界であるはずがなかろう。システム開発のプロでもある人間が言うのも変だが、アプリケーションの開発者は人の才能を舐めるのもいい加減にしてもらいたいと思う。

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