Scribble at 2024-12-09 12:22:42 Last modified: unmodified
ここ数日は岩波書店から刊行されていた「1冊でわかる」というシリーズのタイトルを読んでいた。これは、もともと Oxford University Press から刊行されている "Very Short Introductions" (veryshortintroductions.com) という百科全書的な概説書のシリーズからの翻訳であり、原書は既に800タイトルに迫っている。「新書」や「叢書」といった編纂方法の概説書が数多く出版されている日本では驚く人もいないが、海外では概説書をこれだけの数で揃えるのは珍しい。しかも、それぞれ一定の業績がある研究者によって書かれているので、とある東アジアの辺境地帯みたいに、東大のバイト学生や三流経営者が書き殴ったような新書をゴミのように印刷所から市場へ撒き散らしている国とは事情が異なる。
さて、ここ数日で『グローバリゼーション』と『ポストコロニアリズム』は読了したが、いま読み進めている『デモクラシー』は、著者のバーナード・クリックには申し訳ないが、読み進める必要性も意欲も失ってしまったので、もう読了せずに古本屋へ手放すことにした。学部時代から幾つかの古典的な著作物に目を通してきたけれど、正直なところ歴史的にも政治理論としてもクリアで体系的で厳密で、しかもなおかつ思想としても説得力がある民主主義の著作というものに出会ったことはなく、結局その根拠はデモクラシーそのものが厳密でも首尾一貫もしていない、そして恐らくは正しい政治思想ですらないからなのだろうというのが僕の結論だ。しばしば、民主主義はベストではないがベターな制度だと言われるように、政治のリアリティを理解したり議論するなら重要なコンセプトなり制度ではあろうが、やはり現状でベターだというだけにとどまらず、本来は何がベストなのかという点に強い関心をもつ、われわれのような者にとっては、どうしても厳密に知ったり考えるに値するかどうか疑問が残る。些事とまでは言わないまでも、およそ哲学者が関わるような概念とは思えないのだ。とは言え、一人の国民なり社会人としては、現実に制度として実施されている事実について理解したり考えたり判断する必要はあるから、その範囲では色々と学んだり考えたり議論の必要は感じている。でも、学者、なかんずく哲学者としては、もう関心はない。