Scribble at 2021-08-26 10:18:41 Last modified: unmodified

とにかく色々な違法行為に関連して非難されている外国人技能実習制度だが、そもそもの話として制度を廃止すると何がいけないのだろうか。財団法人国際研修協力機構(JITCO)のような利権団体の食い扶持がなくなったり、厚労省などからの天下り先が減ることだろうか。あるいは、この制度がなくなると働き手がいなくなって農家を初めとする第一次産業が衰退することだろうか。

確かに、衣食住を自国で(やろうと思えば)賄える体制を維持することは重要だ。外交なんて相手がバカでもこちらがバカでも壊れるチャンスなんて幾らでもあるから、輸出入が止まったり法外な関税をかけられるリスクは常にある。少なくとも政治家がどれほどバカでも国内の流通を止めることはできないので、国内でさえ或るていどの自給体制が維持できていれば、大げさに言えば「安全保障」になる。しかし、それには労働力を確保する必要があって、これから50年くらい経過しても、農業を完全にロボットやドローンだけで担うことはできないだろう。

こういう状況があるため、これまでに抜本的な改革のアイデアは幾つか提案されてきた。まず第一に、農業用地を確保しやすくすることや転用を簡単にすること。第二に、営利企業が参入できるための障壁をなくすこと。第三に、流通の大きな障害である農協の影響力を縮小・・・と言わなくても自滅し始めているようだが、こうした改革を続けて第一次産業を〈ペイする事業〉として魅力的な参入先にしなくてはいけない。もちろん、それがモンサントのように巨大な独占企業へ依存してはリスクが高くなるため、色々な事業者が参入しやすくすることに力点がある。

正直、事業者としての〈農家〉が減ろうと知ったことではない。個人として農業を営むのが〈真の姿〉や〈本来の姿〉である必然性などないからだ。それは田舎者のノスタルジーであり、NHK が色々な番組でバラ撒いてきたセンチメンタリズムにすぎない。生まれた土地で生活を続けたいという心情は分かるし、そこで農作物の育成を続けたい方は、自由に続けてもらいたい。それは特に良い悪いの問題ではない。しかし、それはあなたがたが好きにやっていることであり、国家規模の「農業」とは関係がないのである。非常に気の毒だが、それが先祖からどれほどの歴史を受け継ぐ作業や営みであっても、他人から指図されてやっているわけでもないわけだし、それは個人の自由によって続けていることでしかない。よって、外国人技能実習制度のような行政施策で救済したり補助するような公益性はないのである。

実態としては、外国人技能実習制度を利用するほぼ全ての農家は、この制度がなければ〈安い〉労働力を確保できないので事業を存続できないわけである。そして、その安さが労働基準法違反に当たるという指摘は既に報道する必要すらないほど国民の常識となりつつあるわけで、これは既に〈公然の人権侵害〉である。逆に、そういうレベルで人を働かせないと事業を続けられない農家はどう考えても破綻していると言うべきであって、我々の常識的な理解力と判断力で言えば、その事業者は産業支援よりも福祉の対象と見做すべきであろう。簡単に言えば、外国人技能実習制度を利用しようと申請を出してきている時点で、その農家は事業として破綻しているのだ。したがって、このような制度で非効率で生産性の上がらない農家を〈ゾンビ事業者〉として保護するどころか、〈公然の人権侵害〉を助長することは、海外からの信用を落とすどころか、僕ら日本国内に済む者にとって農家や農業がどういうものであるかという印象も貶めることとなる。

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