Scribble at 2023-01-25 12:07:24 Last modified: 2023-01-25 12:19:37

IT企業やネットベンチャーに就職しようという人たちには、「~をやったら~になった」式のブログ記事、たとえば「Adobe Reader が重いときは再起動したら軽くなった、設定のここを無効にしたら軽くなった」といった下らない落書きは、お手軽だけど読まない方がスキルを上げるためには大切だと言っておきたい。もちろん、やったことが全て駄目だったという結果が分かっていて、何か秘訣や解決策があるかのような clickbait は論外だ。いずれにしても、そういう文章は結果がどうであれ、仕組みが分かってない人間の「博物学」や場当たり的な「落ち葉拾い」にすぎないので、応用力がゼロなんだよね。

落ち葉拾いは失敗に学ぶことだからいいとか書いてる人もいるけど、そういうことを書いてるのはたいてい、何度も失敗して構わない大企業の暇人だよ。失敗して色々な経験を積むことは重要だけど、それは正しい方法を推測するためなのであって、最初から正しい方法が分かればそれに越したことはない。どのみち、正しい方法が分かってる範囲だけでは多くの課題は解決しない。なので、新人や若者が分からない状況のまま放置した方が教育的な効果があるとか言ってる人間は、後から来る若い人たちが試行錯誤をスキップして自分のスキルに追いつくのを恐れてるだけなんだよ。要するに、若い人は失敗した方がいいなんて言ってるのは、そいつが無能である証拠なんだ。試行錯誤は、その時点で必要な人がすればいいし、どっちみち誰でも必要になる。しなくていい試行錯誤を若者に求めるのは、既得権益を持ってる無能の参入障壁にすぎず、それこそが「老害」というものである。僕が当サイトとかで書いている記事の多くは、そういう理由もあって余計な回り道をしなくて済むように、しかし体系的かつ原理的な議論を理解して納得できるように(内容が正しいかどうかの議論はあると思うが)道筋を示しているという主旨がある。

いずれにしても、応用力がない人は、ITでは役に立たない。応用力をつけるため一番大切なことは、基礎をしっかりやって仕組みや物事の原因を理解することしかない。だから、伝統芸能の職人さんとかでも、修行したうえで始めて新しいことをやれる。大学でもしっかり勉強した人だけが創造性のある研究成果を残せる。そういうことなしに成果を出せるのは本当の gifted だけであって、ガキが百科事典を読んでるくらいで天才だと思ってはいけない(そんなの俺でも5歳頃にはやってた)。基礎を教えたり修練させるのは、若者に試行錯誤を求める参入障壁とは違う。自分で基礎になる知識とか技能を納得して習得したり理解するためのプロセスだから、そこをスキップしないようにしているのだ。つまり、自分で自分がやっていることに納得したり意味を理解するための試行錯誤は必要だが、どうすればいいのか分からないという試行錯誤は不要だという話である。よって、「やってみた」式の記事なんていくら読んでも、仕事や研究者や職人として生きるための知恵や考え方が身に着かない、つまり納得できる原因とか仕組みがぜんぜん説明されていないという意味で有害なのだ。

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