Scribble at 2026-10-17 21:46:57 Last modified: unmodified
『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』の作品が展開される舞台がどこかの街や地区をモデルにしているなら、どこだろうかという推定をやってきて、もちろん具体的にどこの街であるかは確証がなくても、ストーリーでのランドマークというべき場所の位置関係がうまく合致しているような地域がないものかという観点でも探している。
まず、車両のカラーリングから JR 横浜線の沿線を探した。「始田駅」と「町田駅」の符合、電化区域の通勤車両のカラーリング、山田の(いまでは関東圏全域で使われているが)「~じゃん」という語尾、そしてラーメン好きと言えば家系がある横浜というわけで、横浜市のどこかという推測が最初にあった。
そして論説でも紹介しているが、本作のファンとやらが、ガードレールの形状などが似ているという理由で、JR 中央線の杉並区という推測をしているらしいということで、阿佐ヶ谷とか荻窪あたりを調べてみた。もちろん、東京都内でもラーメン好きの若者は多いだろう。他にも、佐々木の実家が三重県ということで、ひょっとすると地主氏の郷里である可能性があるから、土地鑑があって地名を使っている可能性を考えて、三重県でも調べたところ、三岐鉄道に作品中の「先勝」に類似した「大安」という駅があったり、作品中の「諸々」に類似した「保々」という駅や「始田」に類似した「富田」という駅があったりして、それなりに説得力はある。
ただ、どの地域も確証を決定的に与えるような事実がない。
横浜線で諸々駅にもっとも似ている条件の「十日市場」という駅はコンコースの様子は似ているものの、南口を出て右へ折れても、作品で描かれているような店や住宅がすぐに見えるような場所ではない。また、最も近い業務スーパーが駅から 500 m 以上も離れているから、「諸々駅前」と呼ぶには遠すぎるし、そもそもこのスーパーは平屋の建物ではなく、上層階にマンションがある。バックヤードの場所や様子も作品とは違う。
そして杉並については、どの駅も諸々駅とは似ても似つかない都市の高架駅だし、周辺に点在するスーパーはどれも都市型のビル形状であり、近郊型の平屋(つまり上層階にマンションを持たない)とは異なる。作品の諸々という地域は、杉並区のように、どこを向いても何かしらオフィス・ビルが見えるような土地ではないので、どう考えても郊外の住宅地である。また、既に議論したことだが、杉並区でスーパーのパート従業員が、夫の収入があるという前提で家計の足しに働いているならともかく、独身でマンションを借りてオシャレしたりラーメン店めぐりのような生活をしつつ車を買う資金を貯めるのは困難だと思う。
それから三重県の三岐鉄道沿線は、駅名の符合がよく合うのは興味深いけれど・・・どこの駅の周辺も住宅地と言うには閑散とし過ぎていて、そもそも沿線にスーパーが3店舗ほどしかない。仮に駅名の参考にしたとしても、場所までは反映されていないと思う。
こういうわけで、いまだに作品の舞台を特定ないし想定するには至っていない。もちろん、幾つかの記事で書かれているように、地主氏が作品の舞台を想像で設定している可能性もあるわけだし、日本の特定の地域が該当する保証はない(『白夜行』の論説でも書いているように、僕は「聖地」というマーケティング優先のコンセプトを文芸作品に持ち込むのは反対だ)。そして、作品の舞台についてあれこれと調べていながら言うのは変かもしれないが、僕はどこか具体的な場所が特定できる必要なんてないと思っている。そもそも、そんなことが作品にとって本質的なのであれば、そのようなストーリーはその場所でしか起きなかったことになってしまうからだ。つまり、鼻息の荒い豚オタクどもが「聖地」に押し寄せて、そこへ行けば山田のような女性がスーパーで働いているかもしれないなどという妄想を地域の人々に押し付けるわけだ。これほど迷惑は話はなかろう。