Scribble at 2024-01-16 11:54:27 Last modified: 2024-01-16 18:22:22

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Bluesky has launched RSS feeds

こういう話題がたまに Hacker News でも投稿されていて、人によっては X からの移行を促すためのキャンペーンとして話題にしてるのかもしれないけれど、はっきり言ってそれ(X から Bluesky への大移動)は起きないと僕は思う。Threads すら殆ど話題にもならなくなってるし、いやそれどころか Clubhouse って何だったっけ? っていう人すら出てきているくらいだ。かように、SNS というものに限らず、テクノロジーが関わるサービスには「ロック・イン」というのがあって、現状にどれほどの問題があろうと、それを上回る利便性なり利害関係が維持されている限り、人は簡単にそれを手放したり置き換えたりしない。マスクがどれほど変人で、X がどれほど醜悪なサービスとなりつつあって、X のタイムラインに中国の工作員やネトウヨやインプレッション乞食が山のようにいようと、アビリーンのパラドクスのような状況は簡単に変わらないのである。

だが、もちろん「~という状況は簡単に変わらない」なんてことを言ってるやつばかりが増えても状況が更に悪くなるだけであるのも事実だ。そして、僕はそういうつもりでこんなことを書いているわけではないのだが、しかしだからといって X を放り投げて Threads や Bluesky を使おうと言っても説得力がない。たとえばインフルエンサーの A 氏が動かないのに、A 氏をフォローしている人が A 氏を無視して他の SNS を使う(べき)かどうかなんて、愚問もいいところだろう。

現状では、確かに多くの人が言うように Bluesky は alternative なのかもしれないが、僕は致命的な点で問題があると思っている。やはりそれは、インフルエンサーがいないという人間関係だけの話ではなく、Bluesky がただの同機能の競合でしかないということに尽きる。

どうして Twitter がこれだけのユーザを獲得したのかというと、実はハブとかインフルエンサーがいたというだけの事情ではなかったからだ。そもそも、そういう人間関係やフォローが理由や動機であるなら、当時も Facebook という巨大な競合があったのだ。そこで Twitter が多くのユーザを獲得できたのは、実は Facebook に勝ったのではなく棲み分けができたからだというのが僕の分析だ。なぜなら、Facebook は実名での利用が基本だったので、利用シーンとしてそもそも Twitter とは違うサービスだと見做されていたからだ。たとえば Facebook のアカウントを上司に教えたりフレンドになることを強要されるハラスメントが問題になったりしたが、Twitter は匿名が基本だったので、誰にもアカウントを教えなければ上司や会社の愚痴なんていくらでも書けるというわけだ。日本のように、本音と建前の使い分けが標準的な言葉遣いや生活の習慣になっているところでは、はっきり言って愛社精神や愛校精神どころか愛国心ですら建前であり、実際には嫌いな同僚やバカな上司、あるいはキチガイ経営者のスローガンなどを扱き下ろしたいという鬱屈を貯めた人が Twitter に集まってきたので、いわば Twitter は Facebook を建前の場所とする本音の場所として使われるようになったわけである。

したがって、インフルエンサーやフォローしている人々が他のサービスに移れば自分も移るという人はいるかもしれないが、必ずしもそれだけで X を使っているかといえば、そうでもない。誰が読んでいようといまいと、とりあえずつぶやきたいことを匿名でつぶやくというのが Twitter なり X の主な用途であるという人が多いのだから、その手の独り言については同じことしかできない Bluesky に移る理由などなんにもないわけである。

おまけに、Bluesky はコンテンツのコントロールというリスク対策やブランディングを優先したためか、これも致命的な間違いを犯したと思う。それが、招待制だ。いまどきそんな手法で希少価値を演出するのは二流の広告代理店の発想である。多くの人が使っているということが値打ちであるようなオンライン・サービスにおいて、社交クラブまがいの希少価値なんてものを押し出しても意味はない。実際、つぶやくこと自体が目的の人は招待してもらえないので、当然だが Bluesky を使いようがないし、招待してもらえる人間関係があったとしても、招待してもらうこと自体が面倒臭い、敢えてそれは避けたいという人も多いだろう。招待されたという一点が相手との優劣を微妙に決めてしまうような人間関係なら、なおさらだ。

そして、僕が個人として Bluesky を胡散臭いと思っているのは、Bluesky の経営者であるジャック・ドーシーが、あの懐かしきクズみたいな GIF 画像を NFT という暗号資産として投機の道具に仕立て上げた一人でもあるという経歴を知っているからだ。ジャック・ドーシーを、イーロン・マスクに対立するイデオロギー的なカウンターパートであるかのように錯覚させるような記事を書く人々も多いわけだが、僕に言わせればどちらも単なる企業経営者や投資家というだけにすぎない。どちらが民主党的で、どちらが共和党的であろうと、あるいはどちらがリベラルでどちらがコンサバやリバタリアンだろうと、企業価値の増大とか金儲けという一点においてはどちらも大差ない。アメリカという国が、イデオロギーなどなんであろうと関係なく金融資本主義の国であるという簡単な事実を理解してさえいれば、学問でも軍事でも外交でも福祉でもなんでも経済(必ずしも金儲けという意味だけに限らない)という理屈で動いているのは当然だ。そして、重要なこととして、これは当人が強欲だからそうなるとは限らないのであって(企業経営者に多いとされる、いわゆるアスペルガーであれば、なおさら自覚なんてないだろう)、当人が意図したり願望を持とうと持つまいと、そうなっているのだ。

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