Scribble at 2025-07-19 23:53:52 Last modified: 2025-07-20 00:12:50
わざわざ二人の識者に尋ねておきながら、あやふやな回答しか得ていないというのが情けない限りだ。真の保守思想という立場から言えば、残念ながらこういう議論をしている人々は、労働法や労働経済学の専門家でもない限り、たいてい次のような観点が欠落している。つまり、外国人であろうと日本人であろうと、同一の労働には同一水準の賃金を払わなくてはいけない(もちろん完全に手取りで同額である必要はない)という大原則があるということだ。外国人労働者の賃金が日本人労働者の賃金に比べて3割ほど安いということを認めておきながら、自分で認めているその明白な事実をスルーしてしまうというのは、大学で他人様に経済や法律を講じている立場として情けないと自覚すべきではないだろうか。仮に、取材されたときに指摘しても切り取られてしまうというなら、Yahoo! ニュースのコメントなどにでも書けばいいわけだが、こういう労働法や労働経済学の常識的なものの見方をわきまえているなら即座に思いつくような論評を、この手の話題で「専門家」や「識者」と呼ばれる人々が述べている事例を見たことがない。
つまり、外国人は安く使えるから日本人よりも外国人を雇用する企業が多く、しかるに日本人が失業するなどと言うなら、その真の元凶は外国人労働者ではなく、どう考えても同一労働同一賃金という原則を軽視する日本人の経営者であろう。僕に言わせれば、こういう現行法の理念を尊重するという「保守的な」ものの見方や考え方を軽視して、自分たちの思い上がった、あるいは自分たちの思い込みの観念や価値観にしがみついて議論したりものごとを理解しようとする連中は、右だろうと左だろうと、あるいはネトウヨだろうとリベラルだろうと、われわれのような人類史スケールの保守思想という立場から見れば、どちらもゴロツキのお喋りにすぎない。
とにかく、インチキ保守やチンピラ右翼がくだんのテーマについて排外主義を口にするのは、要するに「日本人」というだけで外国人がどれほど有能であろうと自分たちが優先されるべきであるという、無能や凡人の自己防衛にすぎない。馬鹿だから、何の努力や修練もせずに「日本人」と呼ばれる連中が適当にセックスして生まれ育った人間というだけで、外国人よりも尊重されるはずだという思い込みにおちいる。僕はこれを PHILSCI.INFO では「自己欺瞞」と呼んでいるが、これは何も哲学の話に限らず、アーヴィンジャー・インスティチュートが書いた『自分の小さな「箱」から脱出する方法』(大和書房、2006)のようなビジネス本でも紹介されている、まともな社会人であれば自然と身につく良識や心がけみたいなものである。
そして、こういう議論において僕が紹介したような原理原則をないがしろにする人々は、同じ思考を今度は別の対象にもあてがおうとする。かようなバカでもヒトである以上、われわれ哲学者と同じくものの考え方を別の対象や議論に置き換えるていどの知能はあるからだ。しかるに、昔であれば「女が勉強なんかして、男の仕事の世界に入ってくるとは何事か」とか「我が社のような上場企業がオカマを雇うなんて」とか「法律で知的障がい者の雇用が求められているから、キチガイ専用の部署を作ろう」などと言っていた人間のクズみたいな連中のように、同じ日本人に対しても別の事情があれば簡単に不合理な基準でものごとを判断する。僕らも決してそういう愚かさから免れているわけではなく、常に思考の落とし穴には注意するべきだが、そもそも自分たちが出自や学歴や年収など関係なく物事の理解や判断を間違い得ると自覚していない自己欺瞞に陥っているような人々には、いくらでも教えたり指摘し続ける必要があろう。僕は基本的にバカの相手などしたくはないが、哲学者としてそのていどの社会や歴史に対する責任なり矜持くらいはある。でなければ、なんでわざわざ残された人生の一部を何十分も使って、こんなことをわざわざ書くものか。恩を着せるつもりはないが、SNS で意見を垂れ流す時間が5分ていどでもあるなら、少し黙って他人の意見を見聞きしろと言いたいね。