Scribble at 2022-10-18 10:37:28 Last modified: 2022-10-18 14:19:07

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【超簡単】英単語を一撃で覚える方法

今回は当サイトで掲載している記事に転記する必要もないほどの内容だから、ここで手短に論評しておく。この方の動画を見ているうちに、やはり宣伝というか情報商材と同じようなレトリックやミスリードを使って色々な誤魔化しを積み上げて説得力がありそうな話に仕立て上げていることがわかる。個々のポイントでは、なるほど正しいと思えることを言っているように思うのだが、それらのポイントを繋ぎ合わせている途中の経過に大きな条件があることを敢えて誰でも「自然に」できるかのように説明することで、たいていの人には実際にはできないことを「効率よく」「簡単に」できると言っている。

上記の動画では、再び旺文社の『英単語ターゲット1900』を勧めながら英単語の覚え方を解説している。まず、彼女が説明するとおり、基本的な言葉から学ぶというのは正しい。"have" も学んでいない人が "feign"(でっちあげる) だの "loaf"(怠ける)だのという単語を記憶したところで、こんな単語を会話で使うアメリカ人は滅多におらず、せいぜい "fake" とか "dally" と言うだろう。いや、そもそも「でっちあげる」とか「怠ける」という意味の単語を、「もつ」という意味の単語よりも先に覚えるべき理由がない。生活する中で覚えるだろうから何を学んでもいいという生活習慣かぶれの教育者もたまにいるが、使う頻度から言っても "have" の方が多いに決まっている。"have" よりも "feign" や "loaf" といった単語を生活で使う方が多い家庭や職場なんて、英語を学ぶ以前に生きる場所としてロクなものではない。あなたがアメリカへ移民した子供なら、英語の勉強なんてするよりも先に福祉施設か警察へ逃げ込むべきだ。

さて、その『英単語ターゲット1900』を使いながら、彼女は必要最低限の700単語だけ覚えたら TOEIC や英検でハイスコアを出せると豪語する。僕は、そんなわけないと思うのだが、彼女が展開する話のトリックは「初めは分からなくてもリスニング問題や長文読解の問題を何回も解いて復習しているうちに重要単語は自然に覚えることが出来ます」という、何の根拠も確証も実績もない説明だ。この世の中で英語の読解問題を学校の宿題や受験勉強で解いたことがない高校生なんて殆どいないだろう。たいてい高校生活3年のあいだに最低でも1,000問ていどは宿題や中間テスト(試験も読解の練習ではある)などで問題を解いているはずだが、どうして大半の高校生は僕が何日か前に白抜き(または縁取り)の書体について書いたていどの英文をぜんぜん読み書きできないと言われたりしているのか。

まず最初に指摘しておくと、生活や仕事で頻出するという統計学的な意味での「重要単語」というものは、既に彼女が700語などと言っている中に入っているだろう。それ以外の単語は、仕事や生活する国などの色々な条件で人によって使用頻度が変わるのだから、何が当人にとってよく使う単語なのかは一概に言えない。よって、その人にとって頻繁に使うという意味での重要単語が何であるかは分からない以上、そういう単語が『英単語ターゲット1900』に収録されている保証はない。以前も書いたように、平均的な大学生で約5万語ていどの語彙があると言われているのだから、わずか700単語に各人にとっての好きな決め台詞や口癖などのような単語の大半が入っているなんて幸運を期待しても無駄である。それに、これも以前の記事で書いた通り、わずか700語で他人と会話するのは、幼児がママに喋るようなものであって、それが高校生でも相手に無礼な態度だと思われたり、社会人なら殆ど英語ができない無教養な人物だと思われる可能性が高い。よって、700語で生活したり仕事に従事するなんてことは傲慢もいいところであり、たとえ必要な単語が更に多くて困惑させられる人が多いとしても、そんな低レベルを目標にしてはいけないのである。もし、あなたの家族や周囲の知人・同僚が3歳児ていどの言葉しか使えない人ばかりだったら、どうやって生活したり仕事に取り組んだり物事を相談できるだろうか。「ゼイキンってなに?」「ヨクシコウカってどういうこと?」「どうしてセッタイに行くと、クライアントのおじさんの前でパパがオチンチンの毛を燃やしたりするの?」・・・まぁ、説明や相談なんてしなくていいこともあるとは思うが。

要するに、重要な単語は問題を解いているうちに「自然に覚える」なんて魔法は存在しない。そんなことが可能なら、高校3年間で5,000から6,000の単語を学びながら問題を解くすべての高校生が、卒業時には TOEFL のハイスコアを取れるだろう。しかし、そんなことは決してない。生活する中でひとりでに言葉を覚えるのは、それがまさしく生活にとって必要な言葉として1日に何度も色々な文脈で繰り返されるからだ。しかしながら、英文読解の問題を100回も繰り返す高校生なんていないし、現実的な勉強法でもなければ効率的な勉強法でもない。

そして彼女はこともなげに「リスニング問題や長文読解の問題を何回も解いて復習して」いるうちに単語を覚えるなどと言うが、確か彼女は他の動画では英単語を学ぶときにやってはいけないこととして、長文読解の問題を解くなと言っていたのではなかったか。重要な単語を覚える必要条件なり十分条件として長文読解を解くのが望ましいのであれば、英単語をたくさん覚えるには結局のところ読解問題をたくさん、何度も解かなくてはいけないということになりはしないか。かように、内容としてもかなり矛盾したことを言っていて、一つ一つのポイントでは説得力があっても、やはり正式に大学で教えられている外国語教授法のようなスタンダードな科目を学んだことがないと思われるアマチュア講師のメソッドでは限界があるのだろうと言わざるをえない。

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