Scribble at 2026-05-18 14:57:35 Last modified: unmodified
既に語りつくされようとしている印象もあるが、AI によって業務効率を改善するという話には重大な欠落や思い込みがあるという話だ。
確かに生成 AI は業務工程の一部を高速なプロセスに置き換える効果がある。しかし、そもそも生成 AI は業務工程を「勝手に(自動的に)」は高速にしてくれない。なんにもプロンプトを書かず、ChatGPT のサブスクを契約しただけで、画面にあなたがやろうとしているタスクの成果が勝手に表示されるなんていう魔法は存在しないのだ。つまり、生成 AI は「使いこなす」ことなしに成果を出すことはない。ということは、たとえば業務を改善するために必要なことは、まず業務を改善しなければ事業が継続できないことをヒトが理解して、そのために生成 AI を活用できることを理解し、そしてどう活用すれば効果的であるのかを(生成 AI に質問しながらでも)学び、そうして自分がやるべきことのために生成 AI へ適切な指示を与えることが必要だ。要するに、業務を開始するための前提や脈絡を正確に理解して上流工程を最適化しなくてはならず、それは黙っていて生成 AI がどうにかしてくれるものではないのである。
そもそも、景気が悪くなると多くの会社や自治体などの組織では「業務改善」と口にし始めて、それがうまくいかないと従業員の首を切って固定費を節約して改善したという話にしたがる経営者が多い。残された人たちが、自分も首を切られないようにと、切られた人たちの分まで勝手にオーバー・ワークしてくれるからだ。しかし、そんなことは何度も続かないし、いつまでも続かない。多くの中小企業が起業してから数年で倒産するのは、営業代理だ、アプリだ、テレアポだ、派遣だ、ラーメンだ、名簿だと、アホみたいな思い付きの商材で会社を立ち上げて、ロクなファイナンス活動もせずに、事業が傾いてきたら人を減らすことしか考えない経営者が多いからだ。それらすべては、上流工程を十分に整備せずに思い付きや勢いや何らかの責任感や正義感や意志だけで事業を始めたガキみたいな人々が、無責任で愚かな事業活動に他人を巻き込んだ結果なのである。
事業のライフサイクルを図で表すと、期間だけで言えば開発・実装の工程が最も長い期間を占めているので、開発・実装の工程を短くすることが業務改善だと思い込む人が非常に多い。だが、僕が PHILSCI.INFO で長らく図式や挿絵イラスト、あるいは雑に「見える化」などと言われていることに錯覚や偏見や認知バイアスなどが入り込むことを語ってきたのを覚えている方はお分かりのとおり、ガント・チャートのような visualization にも扱い方や読み方というものがあって、工程を丁寧に矢印や囲み枠で覆って綺麗に描くだけで、その効用が誰にとっても明解であり誤解の余地がないというわけにはいかないのである。したがって、開発・実装の効率を上げることが望ましい場合でも、その長く描かれている工程そのものを短くしようとして、よくあることだが1日あたりの成果としてノルマを課したり(「すべては、お客様のために!」)、拘束時間をやたらと長くしたり(「すべては、お客様のために!」)、あるいは意味も分からず RPA や生成 AI で効率化できると思い込んで業務での利用を強制するだけでは解決しないのである。そういう場合には、原因と結果とを取り違えていることが多々あり、そしてイラストや図表などの描き方だけで、それを利用する者の錯覚や偏見や認知バイアスを避けたり取り除くことはできない。
こういう話は、実は古典的な経営の本にはたびたび書かれていて、目の前にある課題(開発工程の効率化)を解決するには、それが結果として生じているだけの原因(投資の不足や仕様の曖昧さやコミュニケーションのエラーなど)があるはずだという推量が必要なのであって、課題を取り除いたり変えることだけに取り組んでいても長期的で真の解決にはならない。そして、口先で going concern だの何のと言っていようと、たいていの凡庸な経営者というのは、しょせん短期的で目先の利益にしか興味がなかったりする。そこを自ら気づいて是正できない企業は、結局のところ従業員を数年間の「会社ごっこ」というお遊びに巻き込むだけに終わるのだ。なので、僕は企業の経営者については3回以上の解散や倒産を経験した人物を会社法上の「社員」(事実上の株主や経営陣)として置けないように、会社法を改正するべきだと思う。どれほど都内に金融業やシリアル起業家や関東連合などのお小遣いや架空発注をくれるリバタリアンの「なかよし」がたくさんいようと、無能に会社を経営する資格はない。