Scribble at 2023-12-18 12:14:06 Last modified: 2023-12-18 12:15:26
スタンフォード大学出版局から出たばかりの A History of Fake Things on the Internet という本の著者であるウォーター・J・シャイラーへのインタビューである。結局、技術の開発や運用の全般に言えることとして、それが何をもたらすかは分からなくても、何をもたらそうとしてそれを開発したり運用するかは決められるのだから、やはり技術の結果というものは技術だけに原因や責任を負わせて技術的に解決するだけではなく、それを生み出したり運用する人間や社会の問題でもあるという、まことにもっともな主張が展開されている。
ここから言えることとして、いわゆる「フェイク」についても技術をあれこれと非難しているだけでは済まない。数々のアートや芸能で生み出されたり普及してきた作品だって、その大半は嘘っぱちであり作り話だ。でも、『The X-Files』をデタラメだと言って怒る人はいまい。問題は、フェイクがあること自体ではなく、何がフェイクであり、何が事実や真実であるかが、本質的には分からないことが多いという現実を弁える力が不足していたり、そういう区別が明らかであるかのような錯覚に陥る人までもが、世界中に意見を発してしまうようになったということだ。その手助けをしているという点で、もちろんウェブや SNS などの技術やサービスにリスクがあることは確かだ。何も「技術だけでは解決しない」からといって、そこから「技術で解決できることはない」とか「技術で解決しなくてもよい」などという、リバタリアン的な結論は出てこない。
そういや、これまでスタンフォード大学出版局の本って、殆ど無視してきたんだけど、少しは調べてみて読むのもいいかな。