2022年09月29日に初出の投稿

Last modified: 2022-09-29

おおよそ、文庫本でも文芸作品が平均して900円ていどの外税(つまり消費税を加えると店頭では約1,000円)となって、スタグフレーションと呼ばれる状況下では気軽に買えるようなものではなくなりつつある。新書でも同じく店頭で1,000円以上を支払うのが当たり前になっていて、サラリーマンでも小遣い銭で気楽に読むようなものではなくなろうとしている。統計では高校生の平均的な小遣いが月額で5,000円ていどというから、別に読書が趣味というわけでもない、どちらかと言えば1ヵ月に1冊の文庫や新書を買うよりも毎週のように週刊漫画を買う方が多いであろう若者にとっては、どういうジャンルであろうと文庫や新書という体裁の本が1,000円を超えるというインパクトは、それなりに読書をさらに遠ざける意味しかない筈だ。

出版社に対して、本の値段が上がる弁明を求めても無意味である。紙やインクや印刷や製本や輸送などにかかる原材料費や人件費が上がれば、当然ながら商品の価格を上げなくては事業が成立しない。どちらかと言えば、書籍は新聞や雑誌と比べれば価格が上がり難かったと言える商品であり、消費者物価指数で調べても上昇のグラフは雑誌などと比べて物価指数の傾きが非常に緩やかである。よって、1,000円を超えたとは言っても10年や20年で急激に値段が上がったわけではない。もし、ここ20年くらいで急に本が高くなったように感じるなら、その原因は物価ではなく、明らかに消費税率が上がったせいである。

しかし、それとは別に値付けそのものが高いと感じさせる単行本が増えたのも事実であり、僕が大型書店で色々な分野の棚を眺めている経験から言っても、特に翻訳書の値段が20年くらいの間に2倍近くに上がっている印象を受ける。そして1冊の値段が上がるばかりか、上下巻や3巻以上に分冊されている大部の翻訳書が続々と出版されるようになった。個人としては、毎月のように上下巻で1万円近くもかかる大部の翻訳書を次々と買うほど酔狂な人は、いかに資産家の道楽息子や FX マニアや情報商材詐欺師やホストであろうと、そういまい。なぜなら、そういう人々は寧ろ金儲けそのものの作業を実行するために本を読む暇もないからだ。

つまることろ、大手の出版社がそういう高額で大部の翻訳書を続々と発行しても倒産しないのは、既に最初からそういう本は全国の公共図書館や大学図書館が購入する見込みだけで、投資を回収できると知っているからである。簡単に言えば、個人の読書家というのは〈経済学的に舐められている〉のだ。

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