Scribble at 2023-05-22 11:57:47 Last modified: 2023-05-22 14:49:07

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今回は、これまで紹介してきた YouTube の英語学習チャネルとか個々のエピソードについて批評したいわけではない。上記の画像は特に必要ないのだが、これから説明する内容に関連はあるので、いちおう賑やかしとして使っている。

さて、TOEIC のスコアは900点を越えていても英会話ができないとか、あるいは英検が準1級とかでも話せない人たちがいて、しばしば資格試験を批判するためのネタとして紹介されている。実際に、そういう人は多いのだろう。しかし、僕が思うには、そういう人たちの問題がどこにあるかを指摘するのは簡単である。なぜなら、みなさんが自分の母国語、つまりは日本語なら日本でそもそもみなさんが何を話していないかを振り返れば簡単に分かることだからだ。

朝、出勤するために駅へ向かう途上で同じマンションに住んでいる人たちとエレベーターで同乗したり、あるいは路上ですれ違う際に、みなさんは「おはようございます」と挨拶するだろうか。恐らく、挨拶しない人が大半だと思う。ふだんから見知らぬ相手へ挨拶しない人は、いきなり他人のアメリカ人と会話しろと言われても、日本人にすら挨拶しないのだから、なおさら英語でそもそもそんなことをする必要があると感じないだろう。

それが話せない理由だ。

単語さえ何万と覚えていれば英会話なんてどうとでもなるから、文法なんて勉強しなくてもいいと豪語する人がいる。それは20%くらいは現実に当てはまると言えるけれど、それでも英会話ができるようになる仕組みを8割くらいは理解できていないアドバイスだ。だからこそ、そういう文法を無視した些末で下らない英会話の「ヒント」だの「コツ」だのを何百といった YouTube のビデオを配信している人々がいて、それを飽きもせず熱心に眺めている人々がいるのに、そういう人々は何年もそういうビデオを見続ける羽目になる。あるいは世の中には数多くの英会話学校や英会話のフレーズを集めた本が出回っていて、そもそも他人と話すということの本来の目的や動機とは関係のないフレーズだとか熟語だとかを、それこそ様式美のように延々と教えているだけなのである。そんなことを百年やっても、話せるようになるわけがない。実際、日本はこういうことを戦後から50年以上は続けているけれど、殆ど進展がないと言える。

そして、自然と英語が話せるようになっているのは、皮肉にも英会話の学校や教材なんて使っていない若者たちが、海外サービスの MMORPG とかで必要に迫られて相手とチャットせざるをえないとか、興味のあるプログラミング言語の情報を得るために StackOverflow で英語を使わないといけないとか、そういう事情で英語を自ら使っているような状況が大きなチャンスになっている。それに比べて、同じ若者でも日本で提供されているだけのスマホゲームにハマってるだけとか、あるいは日本で発売されているクズみたいな翻訳とかプログラミング言語の本だけを読んでプログラムを書いているような若者も多い。そして、そういう人たちは、いざ英語を使う必要に迫られても、これまでの「英語ペラペラ」という幻想を追いかけてきた老人たちと同じく、英検2級すらとっていないのに映画を見まくったり CNN のポッドキャストを聴いているうちに話せるようになるだろうという錯覚に陥るわけである。普段から英語やフランス語のポッドキャストを聴いているから言えるが(そして上の画像で紹介しているデイナという人物も言っていることだが)、そんなことは断じてありえない。聞いてるだけで覚えるなんて魔術は、それこそ石川遼君が宣伝していたインチキ教材みたいなもので、ありえないのだ。

ふだんから相手に何か言おうという習慣だとか動機や理由がある人なら、往来で出会った相手に向かって "Hello! How are you today?" などと、役人が作った手順書みたいな一式を覚えていなかったとしても、せめて "Hi!" や "'Morning" くらいは言おうとするはずだ("Good morning" のかなり砕けた省略形で、このように "G" すら省略して "morning" という単語しか喋っていない人もいるが、表記するときはアポストロフィを先頭に付ける)。こういう人は何かを言うことが優先だから話すのであって、いう「べき」ことを単語から文法から準備しなくてはいけないなんてことは思っていない。相手に向かって挨拶することが目的であって、英作文や英会話が目的ではないからだ。でも、何か特に言うことがないとか言葉を発する動機がないという人が、単語を何万覚えていても無駄であろう。それを使う、つまり自分の意思表示として誰かに発するという動機がないのだから。

よって、会話だけ教える学校は日本に多いし、上記のように英会話の秘訣なんてことを延々と自分勝手に喋ってる英語の話者も多いのだが、ご承知のように彼らのように何が大切なのかを理解していない人がどう説明しようと、それは英語を使う事情があって使っているにすぎない無自覚な人からのアドバイスでしかないので、そういう事情や動機がない多くの人には効果が低い。僕も中学時代に数ヵ月のコースで20万円くらいかかる英会話学校へ行かされたことがあるけれど、喋る状況を用意されている教室で「ガイジン」と英語で喋るようになっても(残念ながら、或る程度は話せる段階で行ったため、数ヵ月ていどでは殆ど上達しなかった)、それは本当に英語で話したり書く必要がある生活や趣味や仕事とは関係がないのである。いわば、英会話という芝居を演じているに過ぎないからだ。

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