Scribble at 2021-05-16 17:28:25 Last modified: 2021-05-16 17:31:28

There are outdoor markets everywhere in Sub-Sahara Africa. Open-air markets take place in every village and town among the Igbo people. But major markets take place on a rotation based on a four-day week.

Markets in Igboland

光文社古典新訳文庫で『崩れゆく絆』(チヌア・アチェベ、粟飯原文子/訳、2013)を読んでいるのだが、第17章に次のような箇所がある。「[...] そういう場合にも限度があって、七週間、つまり二十八日と決まっていた。」普通に読むと明らかにおかしい。1週間は7日だから、「七週間」なら49日でなければいけないからだ。「二十八日」なら4週間でなくてはならないので、これは「七週間」か「二十八日」のどちらかが誤訳ではないのかと思った。

"Things Fall Apart"(『崩れゆく絆』の原著タイトル)は著作権が保護されているため、該当する箇所を調べようと思えば、筋書きを説明しているサイトで見当をつけなくてはならない。もちろん PDF の原著を探すことくらい僕らのスキルから言ってわけもないし、実際に原著の PDF をダウンロードできるサイトも知っているが、クルーグマンなどの翻訳で知られる「道草」などの違法翻訳サイトを断罪していて、協力してる翻訳家を検挙しろと言っている人間がやることではなかろう。(ただし、解説サイトと称していても、rewordify.com のように殆ど原文を転載しているに等しいものもあるので、利用すること自体が著作権法うんぬん以前に人としての道理に反していないかどうか注意が必要だ。)

ということで梗概を掲載しているサイトを見ると、"The villagers point out that sometimes their ancestral spirits will allow an offending man a grace period of twenty-eight days before they punish his sins, but they are completely astounded when nothing happens after twenty-eight days." などという解説が幾つもある。よって、「二十八日」は誤訳でないと分かる。そして、「七週間」の方も誤訳ではないと分かった。同じく梗概を掲載しているサイトに、第9章で "market weeks" という表現が使われていることを知ったからだ。要するに1週間という単位が7日ではない数え方があるのだろう。そこで、幾つかのサイトや文献を当たってみると、上記のようなページを見つけたわけである。小説と同じく Igbo 地域の話を書いていて、4日で「1週間」となる。そして、翻って『崩れゆく絆』の第9章に何か関連する注釈がないものかと探してみると、注釈65(129頁)に同じく4日で「1週間」とする話がある。

もちろん現地の人たちにしてみれば、自分たちの数え方で「1週間」と言っているのだから、それをそのまま訳して悪い訳はないが、文学作品としての本文はともかく注釈がないと誤解の元でもあろう。

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