Scribble at 2023-10-08 10:43:44 Last modified: 2023-10-08 10:44:19

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まず、1970年の大阪万博も準備が遅れ、昨年の東京五輪・パラリンピックでも遅れが指摘された。大規模なプロジェクトは、どうしてもこうした傾向があるようだ。

万博準備遅れ 国家プロジェクトから国が手を引くことはあり得ない 松井一郎

国内の二つの事例を挙げるだけで一般論を語られても困る。そもそも、彼自身も大阪市長として万博の準備・実行組織に関わってきた当事者のくせに、何を他人事のように論評しているのか。少しは恥を知れと思うね。こういう一般論を冒頭に書いて責任逃れの布石を打ちたいなら、最低でも過去の全ての国で開催された万博の記録とか、あるいは「大規模プロジェクト」の名に値する国家事業を数百ていどのオーダーで調べた上で結論を出すものだ。

こう書くと、この手のポピュリストは即座に「われわれは学者じゃない」とかなんとか口ごたえをするのが習性となっているらしいが、悪いけど学者だったらもっと基準は厳格だ。つまり、一定の基準を満たす可能な限り全ての事例を調べ上げてから結論を出すのが学術研究のレベルである。よって、僕がいま述べた程度の下調べは、はっきり言って中学生の自由研究レベルであろう。要するに、松井氏はそのレベルの下調べすらやってないで、週刊誌のサイトに自分も関わったプロジェクトの杜撰な運営の言い訳を書いているというわけだ。

しかし、そんなことをいちいち議論しなくても分かることが幾つかある。まず、関係者の殆ど全員にとってオリンピックや万博のような事業を運営することは初めての経験であって、仮に経験者がいるとしても、それは一部の実務や運営の経験でしかなく、とても事業全体の、しかも現代のプロジェクトをリードするような経験ではなかろう。当時も今も事業の全体に責任を持つような人材は高齢者であるから、たいていそういう地位の経験者は生きていない。要するに、ほぼ全ての利害関係者にとっては未経験のことをやっているのだから、過去に実施された多くの事業の記録や経験者の話を参考にして、それからプロジェクト・マネジメントの理屈に沿った運営方針を立てて実行していく他にあるまい。そして、そういう下調べや計画の立案にかかわる人員や準備期間がどのていどあるのか、いやそれ以前にそういう下調べや計画を綿密に立てているのかというと、住友化学の社長が片手間にやってるようでは期待できまい(準備委員会の会長を担う十倉雅和氏は経団連の会長でもある)。そもそも日本の企業の経営者なんて、たいていがプロジェクト・マネジメントの能力で社長になっているわけではなく、場当たり的な交渉事や社内政治といった「腕力」に頼っているわけで、実際には幼稚園の遠足すら企画できない無能だらけだ。よって、実際の計画なり交渉の実務は他の人々がやっているわけで、彼らに強いモチベーションなり報酬がなければ、国家官僚と同じくいくらでもデタラメな事業運営となろう。

とりあえず、松井一郎氏は自分もかつては大阪市長として関与したデタラメな事業について外から批評するだけではなく、家業の電飾屋にもいくらかの発注はあるのだろうから、もっと自分の経験(つまり、自分が関わっていた頃に殆ど仕事をしなかったという反省もあるはずだ)を踏まえて論じたほうがよかろう。

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