Scribble at 2021-02-02 11:50:46 Last modified: 2021-02-02 18:59:37

黒人差別と人権運動の歴史や実情について色々と本を探していると、アイダ・B・ウェルズという人物の著作を見つけた。日本語の文献としては、彼女の著作物はわずかに論文1本が訳されている他になく、また人物を紹介する文書も殆どない。現在は浦和大学に在籍する岩本裕子氏が著した「反リンチ運動家アイダ・B・ウェルズ」(『史苑』、立教大学史学会、Vol.51, No.1 (January, 1991), pp.24-42)という論説が最も詳しい日本語リソースと言っていいだろう。

アイダ・B・ウェルズが関わる出来事として Wikipedia でも言及されていることがらに "People's Grocery lynchings" がある。この事件についても、Wikipedia では単独の記事としてまとめられているわけだが、1892年にメンフィスの「みんなの雑貨屋(People's Grocery)」という黒人3人が経営している店が白人の暴徒に襲撃され、経営者がリンチに遭って殺害されるという事件があった。アイダが調べると、彼らがリンチを受けたのは、要するに金を稼いでる裕福な黒人を懲らしめるという、いまでもアメリカのあちらこちらで起きている事件と変わらぬ、下らない理由だった。いまでも、黒人の大学教授や政治家といった人々でも私服で街中を歩いていたら職務質問を受けたりするらしい。こういう話を読むと、僕が中学生の頃に、在日コリアンの同級生たちが外国人登録証明書を持ち歩いていたのを思い出す。街なかで何かあったときに警察官から身分証明を求められた際に外国人登録証明書を持っていないと罰則があったからだ。日本でも、つい10年くらい前までは、保護観察のような行政処分を受けている身分でもなんでもないのに、そうして日常生活を送っている人々がたくさんいたわけである。こんなことをしていた国が、よくも「アジア主義」だの「八紘一宇」だのと口にできたものだと思う。恥を知れと言いたい。

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