Scribble at 2024-06-20 11:38:01 Last modified: 2024-06-25 16:02:13
ビジネス書をかなり大量に読んだという話を何度かしているが、いまや読む必要がないか、読む意味がないと感じて、未読のまま古本屋へ送り出す書籍の箱へ投げ入れるような本もあるにはある。この、シャーリーン・リーが書いた『エンゲージド・リーダー』(山本真司、安部義彦/訳、英治出版、2016)も、その一冊だ。
経営学なんていう未熟な学問に対して結果論や成果主義だけで判定を下すのは酷なことだし、いわんや経営学者ですらない、聞いたこともないコンサル会社の経営者が書いただけの「ソーシャル礼賛本」に、現在の観点から見た結果論として判断を下すまでもなく、本書を手にした数年前の時点ですら学ぶべき点が本当にあったのかどうか、そういう僕自身の鑑識眼を反省する材料としたいくらいだ。
本書は、企業の経営者が SNS を活用して経営戦略を遂行するべきだと力説しているわけだが、その実例として挙げられているのが、GE を崩壊に導いたイメルトや、IBM のロメッティ、Cisco のチェンバースなど、さほど大きな業績を上げたわけでもない人々だ。そして、もちろん彼らが SNS を活用できたとしても、それはこれらの企業が SNS を使う他にない多国籍企業だからであり、しかし皮肉にも、社内に自社だけの SNS を構築するほどの値打ちはないからではないのかという気がする。もちろん、公のサービスを使うことでブランディングにもなるというわけだろう。ただねぇ・・・経営者がどう使うとか、そんなことを一般向けの本として出す必要があるのかな。まぁ日本にもよくいるじゃん、新橋あたりの巨大企業だけで日本企業はどうとか、あるいは会社というものはこうとか語るような手合が。NHK とか大新聞とか国家官僚なんて、たいていはこうした連中としか付き合いがないし、報道するネタだってこういう人々からもらってるわけで、だからこそ 99.999% の「会社」で給料なんて1円たりとも上がってないのに、こういう連中はトヨタとかの労働組合の発表しか見てないから、「多くの企業では数パーセントのベースアップに留まり・・・」とか平気で報道するわけだよ。
ともあれ、SNS を経営に活用してるなんて企業は殆どないし、そして効果を出している企業も殆ない。そして、それゆえに世界経済は停滞したり衰退するのかと言えば、そんなことは全く関係がない。テクノロジーに舞い上がってしまう物書きは多いけれど、これほど典型的に流行のサービスが世界を変えるみたいな厨二病のフレーズを臆面もなく繰り返す人物は珍しい。やっぱり、僕は権威主義者なんだから、権威ある人物の書いたものを優先するべきだよな。いい人ぶって、こういう無名の人間が書いたものを暇潰しに読むなんてことは、やはり時間やお金や労力の無駄だ。そういう露払いみたいなことは、若者や他の凡庸な人間にやらせておけばいいのである。