Scribble at 2025-04-30 12:39:11 Last modified: 2025-04-30 12:53:44
蔵書を引き取ってもらっているノースブックセンターさんの話は何度か書いているのだが、記憶にあるかぎりで言えば、僕が初めて蔵書を古本屋に売ったのは、確か小学5年生の頃だったと思う。小学4年から5年くらいにかけては鉄道少年だった時期があって、わずか数年ではあったけれど、通学で利用していた近鉄奈良線の時刻表を全ての駅で集めていたり、ホビー・ショップでパンチ(正式には「改札鋏」と言って、切符に改札を通過した証として切り込みを入れるための器具)を手に入れたり、記念きっぷもかなり集めていた。そして、僕は幾つかジャンルに分かれている鉄道マニアの中では、時刻表だとか、車両カタログだとか、あるいは鉄道線路の敷設について傾斜などを計算する物理学などの話題について書かれた本を読んでいた。そうした本も相当な数になっていて、数年しか鉄道少年ではなかったのに、いったあれほどの書籍や雑誌をどうやって買ったのかもわからないくらいの蔵書になっていた。しかし、これも何度か書いているが、小学5年生くらいから考古学や古代史に関心が移って、鉄道の本や雑誌の類は殆ど古本屋に売ってしまったわけである。
どれくらいの本を売って、どれくらいになったのかは覚えていない。だが、大判の車両カタログなどを抱えて初めて訪れた古本屋では売らなかった記憶がある。どれくらいで売れるのかは想像していなかったのだが、どう考えてもマニア向けの貴重な本だと思っていた車両カタログなどが著しく安い値段で査定されたからだ。既に古本屋が利ざやで儲けていることは知っていたので、安く手に入れて高く売っていることなど承知の上ではあったが、あまりにも安い査定額を提示されて頭にきたのだ。そういう本は、鉄道雑誌などでマニアどうしが売り買いしている事例もあり(ペンパルを募集したり本やアイテムを売り買いするために、高校生の女の子ですら自宅の住所を雑誌などへ公表していた時代だ)、だいたいどのくらいの値段が売り買いされているのか知っていたのである。僕は古書籍の売り買いという事業そのものは助かるし、あってよい業種だと思っているのだが、もともと書籍や雑誌を出版した会社が得る利益よりも多い利益を古本屋が得るのは感心しない。
もちろん自由経済においては何の法的な問題もないわけだが、古書店は自分たちでは出版物を制作していないのだから、商売人としての節度や矜持がなければ、卸問屋や広告代理店にも言えることだが、ただの中抜き業者やブローカー、つまりはヤクザ者でしかなくなる。それは、どれほど巨大で歴史のある上場企業に勤めていようと、会社員としての節度がなくなれば、営業マンやマーケターなんて口先だけの詐欺師や恫喝屋でしかないのと同じ話であろう。あるいは、スタンフォード大学や東大理学部の博士号をもっていようと、技術者としての節度もなく、他人のプライバシーなんて商売道具としか思っていないやつらなんて、ベンチャー企業を経営しながらホリエモンの番組とかにせっせと出てる小僧なんかは典型だけど、低レベルの数学が理解できてパソコンを弄ぶだけのチンピラでしかない。
なお、オンラインで検索すると、1,000円の本が売れたときの利益率などと言って、著者が10%、取次が10%、書店が20%、そして「残り60%が出版社の利益」とか「出版は出版社が大半の利益を得る事業だ」などと解説している極めつけの馬鹿がいて(印刷、レイアウト、装丁デザイン、紙、倉庫代などを完全に無視しており、寧ろこういう解説をする自称内部の人間こそが出版業界の敵なのである)、こういう馬鹿がたくさんいるから検索というのは信用できないし、ウェブで「書店員」だとか「出版業界の人間」を自称しているような連中の言ってることはぜんぜん当てにならないわけである。他にも日本著者販促センターを名乗るサイトでは、書店の取り分を22%と紹介した後で、営業利益に該当する額が 2% ていどなので経営が厳しいと書いている。しかし、たいていの小売業は間接金融で経営を維持しているのが実態であり、営業利益というのは銀行からの融資を返済しても残る金額なのだ。そもそも営業利益が出ている書店なんて昔からないのである。こういう、会社経営や財務の知識がなくて、何かの聞きかじりだけで出版だとか書店という事業について、やれアマゾンが悪いだの再販制度がどうのと解説する「現場の人間」などというのは、ぜんぜん信用できないんだよね。