Scribble at 2022-06-21 11:15:38 Last modified: 2022-06-21 11:19:28

何か月か前にアカデミー賞の席だったかで、黒人のコメディアンが同じく黒人俳優の妻(彼女も俳優だ)をネタにした発言をしたところ、彼女の夫である黒人俳優がおもむろに立ち上がってコメディアンのいるところまで歩み寄り、いきなり殴打して暴言を繰り返すという事件があった。この後、お互いに謝罪したようだが、イベントを主催する団体は暴行事件を起こした俳優を10年間の出席停止としたようだ(式典への出席だけであって、受賞する権利はあるのだろうか)。

これを、もちろんアメリカでも「妻への愛」というフレーズや観念で称賛する人たちがいる一方で、敢えて黒人として非難している人々もいる。日本では、同じく家族愛だなんだと言ってる人がいたり、単純な暴行だと怒っている人もいるが、黒人の多くがどうして非難しているのかという脈絡は、丁寧に解説されている様子がない。これは残念だ。

簡単に言えば、黒人の多くが式典での暴行を非難している理由は、そういう振る舞いが黒人に対する根強い偏見を補強してしまうからだ・・・「同胞」が相手であろうと、そんなことをアカデミー賞の式典ですらやってしまう奴らというわけである。そして、アメリカで暮らした日本人の多くが経験していることだと思うが、実は黒人は一方的に差別される側ではなく、彼らもアジア人を差別したりするのだ。これまで起きていた暴動の歴史を見ても、彼らの向かう先は白人がいる警察署なんかではなく、日本人や韓国人が営む料理店やスーパーだった。もちろん、そんなことをするのは〈例外〉の黒人であろう。でも、多くの人々にとって、目の前にいる黒人がそういう〈例外〉でないかどうかを、どうやって見分けたらいいというのか。ハーヴァードの学位を持ってる黒人だから安心なのか。ニューヨークの弁護士事務所に勤めてる黒人だから安心か。アカデミー賞の授賞式などという、全米の人が一挙手一投足を観ているイベントに出席してるような人は心配しなくても大丈夫か、というわけである。

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