Scribble at 2025-02-05 08:14:42 Last modified: unmodified

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[...] 近年ではHDDレコーダーや動画配信サービスの普及に伴ってBlu-rayの需要は減少しています。追い打ちをかけるように、2024年12月には韓国の家電大手「LGエレクトロニクス」がBlu-rayプレイヤーの製造を中止するなど、Blu-rayの存在感は薄れつつあります。

光学ディスクメーカーのVerbatimが今後も日本市場へのBlu-ray供給を続けると宣言

控えめに表現しているが、つまるところ光学メディアにバックアップするという習慣が、特に一般人では廃れてきているということだろう。もともとたいていの一般ユーザはバックアップそのものをやらないものだが、それでも一部のパワー・ユーザと呼ばれる人々は、僕もそうだったが8ビット時代はカセット・テープにデータやソフトウェアをバックアップし、次にフロッピィー・ディスク、次に CD-R や MO、次に DVD-R、次に Blu-Ray などと使ってきて、そしていまやクラウド・ストレージを利用する人も増えている。大容量の外付けドライブを使う人も多いだろう。

こういうことになってきている最も大きな理由は、多くのユーザが平均して運用したりバックアップしようとするデータ量の増え方に対して、記録メディアの容量が追いついていないからだ。

たとえば iPhone で標準フォーマットの動画を撮影すると、1,920 x 1,080 ピクセルの 30 FPS というスペックで10分間の動画あたり 1 GB くらいのファイル・サイズとなる。スナップ的に動画を撮影するのが好きな人や、あるいは習慣として動画で何かを記録するといった人だと、10分間の動画を少なくとも毎日のように1本ずつ撮影して保存していれば、あたりまえだが1年間では 350 GB を超える容量を記録するストレージや記録メディアが必要だ。20年くらい前、まだ Twitter すら多くの人に使われていなかった頃だと、こういう習慣がある人は少なかったから、年間で記録するファイルの容量はもっと少なかったわけだが、いまや多くの人々が動画を日記の代わりにしたり、あるいは友達同士でテキストのメッセージではなく動画を送り合ったり、ソーシャル・メディアへ続々と投稿している。企業でも、リモート・ワークが普及し始めてから社内の会議をオンラインで実施するようになると、議事録の代わりに Zoom などの画面を録画して保存するようになる。

また、いわゆるビッグ・データは一部の大企業だけが使うものであって、大半の中小企業には(そういうデータが取得できるとしても)殆ど関係のないものだし、実際のところ中小企業の大半はビッグ・データを活用して取り組むような施策よりも、売上を伸ばしたり、利益率を上げたり、労働生産性を改善したり、経営ガバナンスを向上させるためにやるべきことが他にあるはずだ。しかしそれでも、毎日のように扱うデータは嫌でも増えていくし、蓄積されてくる。弊社のように30人ていどの会社ですら、動画の受注制作だとか、サーバのログだとか、必要かどうかはともかくとして、ひとまず保存しているファイルの容量は増えていく。こういった状況に、最大でも1枚で 100 GB ていどしか記録できない光学メディアでは、必ずしも十分に対応できていないということだろう。

100 GB の容量がある Blu-Ray メディアを一例として採ると、市場に登場してからさほど値段は安くなっておらず、おそらく5枚で2,000円(1枚あたり400円ていど)というコストが限界なのであろう。モデル・ケースとして、毎日の合計で10分間から15分間くらいの動画を日記やスナップで撮影するという人を考えると、単純に見積もれば1年間で Blu-Ray の記録メディアを4枚か5枚は使うことになる。要するに2ヶ月か3ヶ月ごとに記録メディアへバックアップすることになるが、そんなことをこれまででもやってきた(パソコンおたくのようなヘビー・ユーザではなく)一般のユーザなんていただろうか。企業ですら、そんなことたいていやってないはずだ。実際、企業でも外付けの HDD へバックアップするようなことすらやっていない場合が多いのである。だからこそ、ストレージ・デバイスからデータをサルベージする会社がそれなりの数であるのだろう。

もちろん、バックアップは面倒臭い。100 GB のメディアへ記録するとなると、そのあいだパソコンでゲームなんてできないわけだから、それなりの稼働時間を記録するためだけに使うことになる。よく、質問サイトなどで4倍速で書き出すと1時間くらいで終わると言っているが、僕はパイオニアから発売されているビジネス・ユースのドライブを使ってきて、それは現実的な数字ではないと思う。なぜなら、Blu-Ray ディスクへの記録は、メディアの記録容量が大きくなるほど極端に失敗率が跳ね上がるからだ。僕の経験では、25 GB のメディアに焼くときは殆ど失敗がなく、記録しながら同じパソコンで Photoshop すら起動して使えるほどだが、50 GB になると10枚に1枚は他にアプリケーションを全く起動しなくてもエラーが出てメディアへの書き出しに失敗することがあるし、100 GB のメディアでは速度を1倍速で設定しても書き込みは 50 % ていどしか成功しない。つまり、Blu-Ray は書き出しの失敗率が極端に高いのである。なので、僕は仕事では 100 GB のメディアは決して使わない。いま書いたような経験則から言って、2,000円を出費して5枚のメディアを購入しても、せいぜい2枚くらいしか使えないからだ。

なお、これはやや特殊な書き出し方だが、記録用のソフトウェアによっては CD-R の時代に普及した UDF という追記式のフォーマットでファイナライズせずに書き出すという方法もあるのだが、これは一部のソフトウェア作者が敢えて UDF をサポートしないと明言しているように、実装が難しく、複数のバージョンをサポートしなければメディアをマウントできなくなり、また一部の UDF 形式にはライセンスを取得する必要があるため、敢えて UDF をサポートしない書き込みソフトもある。

こんなわけで、色々と面倒臭いし、この25年間くらいのあいだに、CD-R、DVD-R、そして BD-R と記録メディアのメイン・ストリームは替わっていったけれど、700 MB < 4.5 GB < 100 GB という容量が増えたところで、そもそもバックアップという習慣そのものに手間やコストがかかるという事実がなんにも変わらないのではどうしようもないわけである。なので、クラウド・ストレージのように、そもそも自分が作業としてバックアップの労をとる必要がなくなれば、やはり多くのユーザはメディアへのバックアップをやめてしまうだろう。サブスクは確かに割高だが、手軽さの代償として考えたら、いまでも十分に納得できるていどのコストであるというわけなのだ。

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