Scribble at 2023-11-10 18:49:54 Last modified: 2023-11-10 19:07:46

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Terry Winograd

たまたま古本屋で安く手に入れた『岩波情報科学辞典』(1990)を、手元に置いて眺めることが多い。他にも辞書や辞典の類を何冊か手元に置いて、簡単に言えば最初のページから片っ端に眺めていって、興味深い項目を見つけてはノートに拾い上げたり、改めてウェブのコンテンツを検索して肉付けしていったりしている。これは趣味というか習慣のようなもので、保育所へ入るより前から自宅に置いてあった小学館の百科事典だとか草花の百科事典を眺めていた頃から続けている。もちろんだが、こんなことは大学院へ入ったり哲学に関心を持つこととは殆ど関係がないので、真似したり参考にする必要などない。

こういう習慣があるため、もちろん用語辞典の誤植も見つけるし、いまとなっては不適切だとしか思えない例文を辞書に見かけることも多々ある。ということで、『岩波情報科学辞典』には、テリー・アレン・ウイノグラードが "A. T. Winograd" と表記されている (p.47)。恐らく、このようなミスが起きやすい一つの理由は、理数系の書籍や雑誌論文に人名を full spelling で表記しないという、自分たちでは合理的だと思っているのかもしれないが、実際には表記間違いという初歩的なミスを学者として頻繁に引き起こしている愚かな習慣が原因だろうと思う。原稿を書くときに full spelling で書く習慣があれば、「あれ? "Winograd, Allen Terry" ではおかしいな」と気づき易いであろう。ということで、いまどき印刷する文字の量だのインクが勿体ないなどと馬鹿げたことを心配するくらいなら業績を出せというご時世にあって、そういうしょーもない習慣は理数系の文献から排除していただきたいとは思う。なんなら、未熟な文章しか書けない大多数の科学者の文章能力を早晩に追い越そうという勢いの AI に典拠表記や文献表だけでも書かせたらよろしい。

ちなみにだが、省略せずに表記することを「フル・スペル」と呼ぶ奇妙な外来語が流行っていて、これもインチキな(つまりアメリカ人には奇妙な印象を与える)Janglish の一つだ。「綴り」は "spelling" であって、"spell" は魔法やまじないとして唱える呪文とか呪いのことだ。よって、"a full spell of his name" なんて言うと、アメリカ人には「彼の名前を使って強い呪いをかける」みたいな意味に聞こえるのだ(名前に使われる文字は複数だが、それらをひとまとめにして「一つの呪文」として扱うのだから、この場合は単数扱いである)。

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