Scribble at 2024-11-05 09:24:03 Last modified: 2024-11-05 09:41:32

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Schneier on Security

Zenn というサイトは、Qiita のように無料でコンテンツを公開できる CGM サービスらしい。このほど収益化を目的として Pro 版というオプションをリリースしたようだが、原則として無償で提供される文書や電子書籍をホストするサイトらしい。ただ、上のスクリーンショットでも右上に「¥0 今すぐ読む」というボタンが見えているように、投稿者の判断で pay per view となるのだから、基本的にオープン・アクセスの発想で始められたり運営されているわけではないということが分かる。

それならなおさら、シュナイアー本人が何も反応しないという事実に頼って、無断翻訳を有料コンテンツになりえるようなサービスで公開するのは、どうなんだろうかという印象を受けるんだよね(厳密に言えば0円でも法律上は「販売」なり「頒布」と解釈できる)。翻訳した本人は、単なる慈善事業か承認欲求といった動機でやっているとしても、ホストしている側が規約を変更して全てのコンテンツを paywall とする可能性は残る。この翻訳そのものの是非は別としても、せめて最初からオープン・アクセスをサポートするサービスで文書を公開するべきではないかと思うがね。まぁ、過去にクルーグマンの無断翻訳をしていた『道草』というサイトを叩き続けて、いまでは『経済学101』とかいうサイトに逃げて無断翻訳を一部で続けているらしい「文化的テロリスト」どもよりは悪質さがないとは言え、やはりこの手のフリーライダーはどうかと思う。

もちろん、先に書いたとおり、金持ちだけが情報や学術研究の成果にアクセスできるような条件を放置すると、格差が広がるだけだという点では、こういう「文化的テロリズム」を支持してもいいわけだけど、翻訳できるていどの英語力があるなら、せめてシュナイアーに承諾をとるくらいの手間をかけたらどうなのかという気がする。彼はたぶん承諾してくれるだろうから、それなら気兼ねなく翻訳して何の問題もないわけだ。そういう手間をかけるかどうかが、僕らのような大人というかプロというか、他人に向かって何事か意見を述べる資格や見識があるかどうかの違いになると思うんだよね。

それからついでで高校生の諸君に助言しておくと、シュナイアーの文章は英語の文章としては非常に明快で分かりやすく書かれている。最近の高校生は卒業時に英検の2級を取得することが多いというから、もちろん英検2級なら読める文章だ(単語は簡単でも、専門用語としての意味合いは調べる必要があるから、逆に単語が簡単だからといって適当に直訳で読んではいけないという注意点はある)。そして、ネット・ベンチャーとか IT ゼネコンのような業界ではなく、本来の意味で言う IT ベンチャーや IT 企業で働こうという意欲があるなら、シュナイアーの文章くらいは辞書を使わず読めるていどの勉強を大学にいるあいだに続けておかなくてはいけない。おおよその目安だが、アメリカのコンピュータ・サイエンス学科を出た、アイビーリーグでもない大学の学生ですら、シュナイアーの文章ていどだったら単行本1冊、つまり300ページていどを3時間ていどで読むくらいのペースが必要だ(これを「速読」などと言ってる人は、はっきり言って本を読む処理能力が遅すぎると思う)。これに、「それはアメリカ人にとって母国語の本だからだ」などと甘いことを言っているようでは、IT 企業で業績をあげることなどできない。企業の部長という立場もあって、アメリカで就職する際の事情を幾つかのブログ記事などで読んでいるが、移民だからとか外国人だからなどという理由で下駄を履かせてくれるアメリカの会社なんてないのだ。それは、日本でも日本語を満足に話せない外国人を大半の企業が採用しようともしない事実とまったく同じである。

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