Scribble at 2021-02-06 19:01:51 Last modified: unmodified

EPUB3は、誰でも無償で使える電子出版の国際標準規格(オープンスタンダード)です。IDPF (International Digital Publishing Forum/ 国際電子出版フォーラム) が規格の開発と維持をしています。

DAISY/EPUBについて

僕にとって "inclusion" という単語は、あまり好きな語感の言葉ではない。「お前たちも、こっちの〈まともな人間の部類〉に入れてやる」といった傲慢な響きがあるからだ。Merrian-Webster でも "the act or practice of including and accommodating people who have historically been excluded (as because of their race, gender, sexuality, or ability)" という語釈があって、もちろん悪意はないものの、excluded だった人々について、accommodate する(便利を図る)とか include するというのは、他の語釈で使われている "unify" よりも〈こっち〉と〈あっち〉の対比が強い言い方で、どうも割り切れない語感がある。しかしともあれ、オンラインで文書を公表する者の端くれとして、ユーザビリティだのアクセシビリティだのと口にしてきた一人として、"digital inclusion" というスローガンにも一定の関心はある。日本語で書かれた著作権切れの文章だとか、あるいは翻訳できる古典的な著作物であれば、こうしたスローガンに準拠した規格のドキュメントに作り直したり、あるいは新しく作ったりすることも考える。

僕は、個人としてデジタル化された文書を保存するときは、ウェブ・ページならそのまま HTML として保存しているのだが、Internet Archive なりオンラインの雑誌サイトで公開されている文書であれば、その大半を PDF として自分のコンピュータへ保存している。もちろん、他にも上記のようなページで紹介されている文書フォーマットとしての EPUB も知ってるし、ユニバーサルな規格としての Daisy も知っているわけだが、対応している出版元が少なくてフォーマットの統一性がないことや、見た目の好み(やはり紙に印刷した体裁としてのレイアウトで判断してしまう)という点から、いまだに EPUB の電子書籍は好きになれない。それになにより、EPUB のフロー化されたドキュメントだと、最初からそういうフォーマットで出版されているならともかく、既存の印刷物の電子化だとページ数が合わず、典拠として使えないという問題がある。

しかし、少なくともページ数を既存の出版物と合わせるという制約がなければ、紙に印刷したときのレイアウトの美しさなどに拘る必要はなく、デジタル・デバイスでの読みやすさや情報、データの取り回しを優先するのが妥当だろう。そういうことで、幾つかの視覚障害者団体のサイトやデジタル文書の作成ソフトを開発している団体のサイトへアクセスして、色々なページで Daisy や EPUB3 の紹介記事を眺めた結果、もともと抱いていた EPUB への否定的な印象は殆ど払拭できたと思う。

そういうわけで、PHILSCI.INFO で公開する予定の翻訳文書を EPUB 形式でも公開できるように、制作手順を調べたり公開方法を検討している。数式のマークアップには MathML を採用しており、昔は TeX と似た書式だったようだが、現在は違うらしい。これも、改めて W3C などの文書で習得する必要がある(科学哲学で扱う数式や論理式は具体的な計算を意図しているわけではないため、さほど複雑な例はない)。

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