Scribble at 2025-03-11 13:44:23 Last modified: 2025-03-11 16:12:05

添付画像

クリエーティブのサイトでは、もちろん生成 AI で作成した画像を掲載するのだが、Stable Diffusion Web UI で生成した画像をそのまま掲載するわけではなく(たとえば上の画像は何もレタッチしていない)、僕なりに調整を加えた画像として公開する予定だ。そして、そうした画像の中でも重要な位置づけとなるのが、グレースケールの画像である。というか、寧ろグレースケールの画像だけ公開してもいいかなと思うくらい、カラーの画像に比べて魅力的な結果が多いという印象がある。そして更に、僕が数百枚の画像(もちろん国立国会図書や nga.gov で公開されているパブリック・ドメインの写真ファイル)を使ってトレーニングした、オリジナルの LoRA を適用してあるビンテージ画像も公開していく。これは、単純に古い写真の赤茶けた風合いになっている場合もあるし、シアノタイプの効果を加えた現代的な風景の画像も含まれる。

こうしたグレースケールの画像を作成したり調整するに際して、いまのところ国内で唯一と言ってもいい参考書が、ヴィンセント・ヴェルサーチによる『モノクロ × Photoshop [陰影が生み出す美と感動]』(株式会社Bスプラウト/訳、ボーンデジタル、2014)だ。以前もご紹介したが、この本には既に古くなった情報が多くて慎重に読む必要はあるが(それゆえか絶版になっている)、モノクロのデジタル写真についての基本的な考え方や色彩などの理論的な背景は一読の価値がある。そもそも、この本が出てから10年以上が経過するというのに、この本を超えるモノクロ写真の解説書が、僕の知る限りでは原著の英語ですら出ていないのだから(Photoshop のイージーな、しかし昨今はそれでも5,000円近くするハウツー本はウジ虫のように湧いてくるが)、いかにこの本が決定的なインパクトを与えたかが分かる。

ただし、翻訳本には趣旨のよく分からないことが書かれていたりする。たとえば185ページには、1986年に亡くなっているはずのアンセル・アダムスが Adobe Photoshop を論評しているかのような表現があって、ここは原書の該当箇所(174ページ)を参照してみると "One of the great advantages offered by Photoshop to the (as Ansel Adams put it) 'artist and functional practitioner' is the fine control that..."(かつてアンセル・アダムスが「アーティストや実務家」と呼んだ人々にとって Photoshop が提供する優れた利点の一つは [...])となっていて、訳本の表現は明らかに誤訳だ。実のところ、この本にはこういう辻褄の合わない奇妙な、そしてそのせいで非常に読み辛い箇所がかなりある。できれば、原書で読むことをお勧めする。

このようなわけで、それなりに問題のある訳本ではあるが、一読する値打ちはあるはずだ。それでも絶版になってしまうのだから、いかにモノクロ写真やグレースケール画像のニーズが少ないかが分かる。たとえば、いまどきのスマホで撮影した写真をわざわざグレースケールに変換する人なんて殆どいないだろう。ましてや、それを一貫したクリエーティブという目的でやる人なんて、デザイナーを名乗っている人の中でも殆どいないと思う。もちろんこれは、プロの写真家においても同じことであろう。結婚式や七五三の記念写真をモノクロで撮ってくれなんて言う客はいないはずだ。せいぜい、継続したニーズがあるとすれば、新聞や雑誌に掲載する写真の仕事くらいだろう。そして、キャパはいい、Leica のカメラはいいと言いつつも、実際にそれを手にした写真家(秋山泰彦氏)の本を見てみると、つい先日も書いたように酷い出来栄えのスナップばかりを並べた駄作を出版している。正直、あの程度のモノクロ写真でプロの写真家が名乗れるなら、生成 AI で出力した画像をレタッチしてる人がクリエイターを名乗って何が悪いと思うね。しょせん、プロは結果が全てだ。プロを名乗っていようとクズを吐き出せば、カップ麺のコマーシャルみたいに「生成 AI 以下」だとこき下ろされるのだ。

  1. もっと新しいノート <<
  2. >> もっと古いノート

冒頭に戻る


共有ボタンは廃止しました。