Scribble at 2024-08-08 15:41:54 Last modified: 2024-08-08 15:47:37
このところ、Intel のプロセッサや RISC-V のプロセッサに深刻なバグが見つかったり、あるいは Windows にもセキュリティ更新を「なかったことにする」という深刻な問題が見つかっていて、やはり情報セキュリティ対策には終わりがないなと思わせられる。実務家として言えば、これはこの分野を学び始めたときから分かっていた常識ではあるけれど、やはりあらためて切実に受け止め直して、自分自身の環境であろうと会社の業務環境であろうと、原則に立ち返って対策の是非を検討し直してみることが求められる。本来は、こういうことは毎年の行事みたいに(できれば Windows Update のタイミングで毎月のように)行うことが望ましいのだろうが、現実にはその簡単で適切な手順というものが知られていないし、貫徹することも難しい。正直、IT パスポート試験に合格するかどうかも疑わしい一般のユーザなんて、セキュリティ以前にコントロール・パネルを開く手順を知らないどころか、「エクスプローラを開いて」と言っても何のことか理解できないような人も多い(ファイルやフォルダにアクセスする『あれ』がエクスプローラというプログラムだと知らない人も多い。いわんや、あれが Windows の GUI シェルであり云々なんて説明したところで、理解不能であろう。「デジタル・ネイティブ」の実態とは、しょせんオンライン・サービスを使い慣れているというだけのヘビー・ユーザの別名でしかなく、いわゆる IT 人材なんて日本に最初からいないし、増えてもいないのだ)。
しかし、原則どおりに愚直にやってみようというつもりがあるなら、是非これからお勧めしたいこととして、試しに「検索エンジンを完全にスルーする」ということを提案したい。なぜなら、ウイルス感染の一つの経路は、信用できるのかどうかわからないサイトやブログなのに、検索エンジンの結果に並んでいるというだけでアクセスしてしまい、ウイルスを気づかないうちにダウンロードさせられてしまうことにあるからだ。そもそも、検索エンジンを多くの人が必要としていたのは、なにもウェブサイトを見つけるためでもなければ、ウェブ・ページを見つけるためでもなかったはずである。つまり、僕らが昔の Yahoo! のディレクトリ検索でカテゴリーごとに並んでいるウェブサイトの一覧を眺めていたのは、それらのサイトに求める情報なり知見なりデータがあると期待できたからなのであって、それらウェブサイトやページに訪れること自体が目的ではなかったのだ。ここに立ち返るなら、いまや僕らは AI のサービスを利用して知らないことを質問できるし、データすら示してもらえる。確かにその信頼性については多くの問題があるとしても、だからといって検索した結果に並ぶページの情報が AI の回答よりも正しい保証などないであろう。というか、そんなことを正確に比較できるのは、それこそ検索するまでもなく情報や知識を得ているプロパーの研究者や実務家だけである。
というわけなので、たとえば「岩手県の人口」を知りたいなら、もうわれわれは AI に質問するだけでよいかもしれないのであって、Google や Bing に "岩手県" だの "人口" だのとキーワードを入力して、冒頭に幾つか並ぶと思われる、岩手県に住む主婦と「逢える」サイトの広告だとか、岩手出身の芸能人が教える株式投資セミナーの広告だとか、岩手県でウェブデザイナーとしてデビューするためのオンライン講座の広告だとか、岩手県で発見された貴重な岩石を混ぜた癌の特効薬の広告だとか、ともかくそうしたカスやクズみたいなものを見なくても済むような生活にシフトできるかもしれない。いまのところ、AI の回答にも「情報のソース」と称してリンクが加わっている場合もあるが、僕が愛用している Claude には、そういう余計な情報もない。そもそも、そういうソースから適切に情報を拾い上げて回答しているなら、ソースなんて示さなくても良いはずだからだ(学術論文じゃないんだから。それに、AI の回答の担保はソースを示すかどうかにあるわけではないからだ。回答とソースとの関連付けが出鱈目だったり、ソースの URL が間違ってることも多いからね)。