Scribble at 2024-03-18 07:32:36 Last modified: 2024-03-18 16:56:02
ウェブ制作会社とか広告代理店の記事というのは、基本的に自分たちへの発注を増やしたり、自分たち(の業界)のブランディングという目的があって公開されている。なにも世のため人のために私企業、まして広告代理店やウェブ制作会社が海外の記事をわざわざ翻訳したり、公益に資する情報を公開するなんてことをやるわけがないという前提で、眉に唾をつけて読むのがメディア・リテラシーの基本だ。これは、敢えて広告代理店を株主としているウェブ制作会社の部長というポジション・トークで言っている。もちろん、僕もそういうウェブ・コンテンツ制作業界の人間ではあるし、自社の受注が増えるほうが喜ばしいし、もちろん広告という仕事に一定の敬意をもっているので、僕が書いているものも過信してはいけないわけだが、大きな、そして根本的に重大な例外として、僕は広告人、企業人であるまえに哲学者であるという一点が異なる。これを最優先にしているがゆえ、ウェブ制作の業界や広告業界についても言いたいことや言うべきことは(可能な範囲で)言うし、仕事においても可能な限り自分の哲学者としての方針や意見を実務に適用してきたつもりだ。
ということで言えば、もちろん上の記事をざっと眺めた方ならお分かりのように、こんな馬鹿なことをわざわざ21世紀になってまで書いているのが、インチキな口八丁で金を稼いでいる連中の本質だ。たぶん分かってやってるんだろうけど、もし無自覚ならただの馬鹿だから、こんなやつらの文章を読む必要はない。
この記事が述べているのは3つであり、「消費者行動の変化をとらえ、新たなニーズに備える」、「既存の能力と資産を創造的に再活用する」、「顧客中心主義でポートフォリオを多様化し、新たなユーザー価値を獲得する」となる。なにやら現代的でクールなアドバイスが書かれているかのように感じるかもしれないが、それは錯覚だ。こんなことは50年前の客商売の会社で新人研修の教材にでも書かれていたような話でしかない。なぜなら、これらを煎じ詰めると「客に合わせる」、「やれることをやる」、「客を喜ばせる」と言っているだけだからだ。これは、まったくもって客商売の基本を言い換えているにすぎない。そして、こんなことを重大な秘訣だとか、いまようやく分かったり新しく提案できるかのようなふりをしていること自体、この連中の記事が大昔から繰り返されてきただけのことを新しいサービスであるかのように、パッケージだけを入れ替えて販売しなおそうとしている自社宣伝だと言える。
僕は AXIS という書体を愛好していて、社内の文書を InDesign で制作するときも頻繁に使っているけれど、『AXIS』という雑誌はタイポグラフィだけを扱った方がいいと思うね。もうあんたらはフォントの話以外はしなくていいよって思う。フォント・デザイナーってマーケティングとかはプロじゃないわけだし。活字屋がマーケティングや広告や営業を説いて聞かせるとか、どの口で言ってんだよって思う。