Scribble at 2021-03-23 14:07:35 Last modified: 2021-03-23 14:10:39
都市計画の教科書にも紹介される古典的な見本として、フランスのフーリエを始めとする社会主義者のアイデアから影響を受けた Jean-Baptiste André Godin という人物が出資・設立した「ファミリステール」という区域がある。パリから北東へ 170km ほどの位置にあるギーズという街に19世紀の末に造営されたコミュニティ区画を伴う共同体であり、僕が生まれた1968年に株式会社となるまでは、組合つまりは労働者自身の運営に委ねられていたという。
ただ、検索してみるとフランスの旅行ガイド的なサイトの紹介記事しかなく、都市計画論の古典的な事例とされているわりには学生やプロパーの興味を惹かないらしい。思えば、日本の都市計画や建築ではバブル期の磯崎新氏に代表される人々が乱造した稚拙で愚劣なポストモダン建築や、僕も修士課程の時代に先輩から見せられて閉口した、日本の都市設計学者による低レベルとしか言いようがない哲学や社会思想の濫用論文などの実例が多くあると、イデオロギーや社会思想に染まった建築設計や都市計画を現今の学生や若手の研究者が敬遠していたとしても無理はないという気がする。
ただ、都市計画は環境や人や制度を〈設計〉したり〈管理〉しようという、そもそもが傲慢なアプローチなのであるからして、その責任を自覚するためにも思想なり社会制度についての高い見識は必要だ。建築基準法や三角関数だけ知っていればいいというものではない。