Scribble at 2023-08-27 10:04:19 Last modified: 2023-08-27 10:09:13

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For many home-schoolers, parents are no longer doing the teaching

「ホーム・スクーリング」というのは、特にアメリカでは強烈なクリスチャンが小学校で子供に進化論を教えてほしくないとか、あるいは高校でアメリカが原爆を落としたとか黒人差別をやってるといった左翼教育なり CRT (critical race theory) の類を子供に吹き込んでもらいたくないトランプ支持者の親が、公教育を否定して自宅で自分で子供を教育するというのがコンセプトだった。あるいは、もう少し違う脈絡では学校の宿題とか予復習というタスクが子供の生活を歪めたり、自宅へ戻ってからのライフ・スタイルを支配していると考える親がいて、こういう理由でも学校教育を否定したりする。もちろん、もっと切実な事情、たとえば子供が学校で(同級生どころか教師に)虐められているとか、家が学校まで遠くてバスもないが歩かせたり自転車で通わせるのは危険だとか、ドラッグが流行しているという噂があるとか、拳銃を持ち歩いてる生徒がいるとか、行こうにも難しい場合があろう。

ともあれ積極的に親がホーム・スクーリングを選択している場合に共通しているのは、アメリカ流の保守主義つまり自由主義である。ここが大半の日本の人々には理解されにくいのだが、アメリカの歴史を学べば簡単に分かる。そして、何も大学で講義を受講なんてしなくてもいいわけで、薄い新書を1冊でも何日かかけて読めば済むだけのことなのだ。この程度をすらしないで何十年もアメリカの「リベラル」と自由主義とを混同して理解し評論したり本を書いているような人々がいる。これだけ情報の流通が簡単になると陰謀論は通用しないが、まるでアメリカの間違った理解を蔓延させて維持するような圧力でもあったかのようだ。

いずれにせよ、アメリカの保守的な人々は自主独立を尊ぶ、しかも金持ちのリバタリアンともなれば多くは万能感に陥っているため、自分たちのやることに迷いや躊躇や反省がない。よって、アメリカでは続々と「博士号も持ってないリベラルのメキシコ人の小学校教師なんかに、アイビー・リーグを出て年収50万ドルある我々の子供を任せるわけにはいかない」ということになる。逆に貧しい家庭でも、学校に問題があろうと簡単に引っ越したりできないため、子供が虐められているから転校したいが難しいという場合もあろう。たとえば多くの州では義務教育の年齢が18歳くらいまでと決まっているので、実質的にホーム・スクーリングが難しいのだが、逆にアラスカ州のように年齢制限なくホーム・スクーリングをやってよく、許可や届出すら必要ないという、殆ど公的機関が子供の教育を管理していないのではないかとすら思うようなところもある(たぶん、アラスカ出身者の多くは学校でもクマやザトウクジラに歴史を教えてもらっているのだろう)。

で、ここまで書いてようやく上の記事の話になる。簡単に言えば、もうホーム・スクーリングとは言っても親が子供を教えたりしていないということである。もちろん、親が教えなくてはいけないという決まりではないから、クララのようにロッテンマイヤーさんに教えてもらってもいいわけである(こういうネタを使うからガキに通じなくなるのか)。そして、このような実態は最初から予想できたと言えばできたはずだ。なぜなら、そもそもホーム・スクーリングとは言っても親が好き勝手なことを子供に教えられるわけではなく、しかも多くの州では教える方の親に一定の資格を求めているため、実際にはホーム・スクーリングのハードルはそれなりに高いし、子供を教育し続ける期間の自分たちの時間や労力も削られることになるため、たとえば家庭不和の原因になったり(アメリカでも、いやホーム・スクーリングを選ぶ保守層ならなおさら、子供を学校から引き離したはいいが、後は「妻が子供を育てる」という方針の男性も多いだろう。保守層の「自由主義」とは女性の自由とは関係がない)、単に子供を学校へ行かせずに家業などで働かせるための名目になっていたりする。そして、記事のように教育産業を騙る、実質的に「子守」と言う方がいいような業者や個人事業主へ丸投げという事例も多いのだろう。

この記事を伝えていた Hacker News のコメントにもあるように、その地域で専門の知識があるとか教師だった人物に特定の教科を任せて子供を集めて教育してもらえば、ホーム・スクーリングによくある「自宅にいるばかりだと社交性が培われない」という批判を交わせる。ただし、個人の自宅に子供を預けると、人数が少なければ何らかのリスクはあるため(たとえば子供がレイプされるとか)、任せるが教育する場所を教会のような公的な場所に限定するといった工夫がなされているらしい。

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